糖尿病の発症率には地理的な格差が知られています。過去の研究では、居住地の近隣に運動に適した環境や健康的な食材を入手しやすい環境があると、糖尿病を発症しにくい可能性が報告されていました。しかし、これまでに報告されている研究の多くが、都市部での調査結果であり、郊外や農村部など、都市部以外の地域に一般化できるかどうかはよく分かっていませんでした。
そんな中、食環境(近隣の食料品店やレストランなどの店舗数)と、糖尿病の発症リスクの関連性を検討した研究論文が、米国医師会誌のオープンアクセスジャーナルに2021年10月1日付で掲載されました。
この研究では、米国の退役軍人データベースから糖尿病を発症していない約410万人(平均59歳、男性92%)が対象となっています。地理情報システムを用いて、研究参加者が居住している近隣のファストフード店、そしてスーパーマーケットの店舗数が調査され、糖尿病の発症リスクとの関連性が検討されました。なお、研究結果に影響し得る年齢、性別、所得水準などの因子で統計的に補正して解析しています。
中央値で5.5年にわたる追跡調査の結果、食環境におけるファストフード店の数が10%増加すると、都市部、郊外、農村部いずれにおいても糖尿病の発症リスクが1~2%増加しました。一方で、スーパーマーケットでは店舗数が10%増加すると、郊外と農村部において糖尿病リスクが1~3%低下しました。
食環境が直接的に糖尿病のリスクを高めているわけではないと思いますが、論文著者らは「ファストフード店の数を制限し、スーパーマーケットを増やすことが、糖尿病患者を減らすことにつながるかもしれない」と結論しています。
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