病気を近づけない体のメンテナンス

首<上>肩こりを侮るな 頚椎症を解決する4つの簡単体操

写真はイメージ
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 首・肩の筋肉は一体となって収縮し、重い頭を支えている。

 この筋肉の収縮が過剰になったり長時間続いたりすると、首や肩にこりを感じ、やがて首の痛みが生じたりスムーズに動かせなくなったりすることがある。スマホやパソコンの操作を日常的に長時間行っている人は、経験することの多い症状だろう。

 しかし、「たかが肩こり」と侮ってはいけない。放置すると、首の骨や軟骨が変形して神経の圧迫を招き、腕の痛みやしびれなどを引き起こす。

 さらに進行すると、手足のマヒや内臓の機能低下など、症状の重症化を招くこともある。こうした肩こりから始まる一連の症状を「頚椎症」と呼ぶ。

最新版 首を伸ばして自分で治す! 頸椎症」(宝島社)の著者で、整形外科「竹谷内医院」(東京都中央区)の竹谷内康修院長が言う。

「首や肩、腕に痛みやしびれが生じて整形外科などに行くと、たいていはレントゲンを撮り、特に異常がなければ痛み止めの飲み薬や湿布薬を処方されます。しかし、これでは原因の根本的な解決にならず、やがてぶり返したり、悪化したりします。頚椎症の治療で大切なのは、筋肉の緊張を適切に緩和すること。ですから、首や肩のこりが慢性化したら『頚椎症の初期症状』と捉え、ストレッチなどの運動療法で筋肉の緊張を和らげることを始めるべきです」

 頚椎症の症状が「ひとつながり」であることから、竹谷内院長は頚椎症を次のような0~4のステージに分類している。《ステージ0》頚椎症予備群。首・肩のこりや痛みはないが、首や肩の筋肉に張りが出て、首の動きが悪くなり始めている。

《ステージ1》痛むほどではないが、首や肩にこりがあるのを自覚している。

《ステージ2》筋肉のこりが高じて首や肩が痛い。寝違えを起こしやすい。

《ステージ3》腕にまで痛みやしびれが起きている。たいてい左右どちらかの一方の腕に起こる。

《ステージ4》両方の腕や足にしびれが起こる。加えて、触れても皮膚の感覚がなかったり手や腕のマヒを伴ったり、握力も低下する。手先を使う細かい作業がしにくい。

 症状は、必ずしも0から4への順番で表れるわけではない。上位から急に表れることもある。現在は低いステージにいても、放置すれば将来的にステージ3や4に移行する恐れがあるのだ。

「頚椎症は、症状が表れた後も何のケアもしなければ、時間とともに悪化していく一方です。そこで頚椎症を改善するための『かんたん体操』を考案し、実際に患者さんにも指導しています。体操はステージごとに異なりますが、いずれも全部で4つの体操を連続して行うことを1セットとして毎日実践します」

 ここでは全ステージ共通の2種と、ステージ0~2で行う2種の体操を紹介する。

《全ステージ共通》

■背骨伸ばし

①背もたれの高い(肩甲骨の半ばよりも高い)椅子に座る②背骨の丸みの頂点が支点になるように、タオルを丸めて背中に挟む③首の後ろで両手を合わせる④可動域いっぱいまで、ゆっくり背中を反らせる⑤反らしたところから、さらに最大限背中を反らし切る。1~2秒キープし、ゆっくり姿勢を戻す。これを10回行う。

■首倒し

①リラックスして椅子に座り、左手で椅子のヘリを持つ。猫背にならないように注意②首を右斜め前に倒す③右手を左耳の後ろ辺りに当てる。右手で頭を右斜め前に押し、10秒キープ。左右を変えて、反対側も同様に行う。10秒キープ×3回を左右行う。

《ステージ0~2》

■チンタック

①背筋を伸ばして椅子に座り、顎の先端に人さし指を添える②首の前側の筋肉に力を入れ、首が反らないよう、顎を指で押して、頭の位置を後ろにスライドさせる。最大限後ろに引いたところで1~2秒キープする。これを10回1セット行う。

■首反らし

①椅子に座り、左手で椅子のヘリを持つ。右手を左の肩から鎖骨の部分に当て、上から押さえる②その状態でゆっくり真上を向く③首を右に倒す。左前側の首筋の伸びを意識しながら、よく伸びたところで10秒キープ。このとき肩と鎖骨が上がらないようにする。反対側も同様に行う。1回10秒×3回を左右行う。

 次回は、頚椎症を改善する生活マニュアルを解説してもらう。

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