みんなの眼科教室 教えて清澤先生

「失明する病気」にずっと本人が気が付かない理由は?

コンタクトレンズを作るため来院して緑内障とわかるケースも…(C)PIXTA

【Q】雑誌などでよく失明する話を目にしますが、信じられません。失明するくらい状態が悪ければ、目がかすむとか視力が落ちるなどして本人が気付くと思うのですが…(48歳・女性)

【A】当院の患者さんからも同じような質問を受けることがあります。今回は日本人が失明する病気を取り上げて、なぜ気付き難いのかをお話しします。

 日本人の失明原因第1位は「緑内障」です。緑内障は、視野の周辺に見えない部分ができ、それがゆっくり広がっていく病気です。視野が欠けていることに気付かず、失明してしまうケースもあります。緑内障の視野欠損に気付き難い理由は3つあります。まず、片目に見えない部分があっても、反対側の目の見える部分で補ってしまうからです。片目で見れば、気が付くかもしれません。 次に、片目に視野欠損があっても、人間の脳にはその部分を周りの色調で補完する特性があるからです。芝生に禿げた部分があっても周りの緑で埋めてしまう感じです。最後は、ゆっくり周辺部の視野欠損が進んでも、緑内障では真ん中の部分の視野が侵されないと視力低下が起こらないためです。「小さい文字も読めるから大丈夫だろう」と眼科受診が遅れるケースが多くみられます。

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清澤源弘

清澤源弘

1953年、長野県生まれ。東北大学医学部卒、同大学院修了。86年、仏原子力庁、翌年に米ペンシルベニア大学並びにウイリス眼科病院に留学。92年、東京医科歯科大眼科助教授。2005-2021年清澤眼科院長。2021年11月自由が丘清澤眼科を新たに開院。日本眼科学会専門医、日本眼科医会学術部委員、日本神経眼科学会名誉会員など。

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