病気を近づけない体のメンテナンス

膝<上>変形性膝関節痛を治す4つのステップ 専門医が解説

写真はイメージ
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 40代、50代を過ぎた頃から、膝の痛みを感じる人が増えてくる。加齢による膝の痛みは、「変形性膝関節症」が原因で起こることが多く、潜在的患者(予備群)を含めると約3000万人いると推定されている。

 変形性膝関節症は、加齢とともに膝の軟骨が徐々にすり減っていく病気。進行すると骨の形が変わって靱帯がゆるみ、関節が徐々に変形していく。それによって体の重心バランスが崩れ、変形が進み、痛みが表れやすくなるのだ。

 ところが、レントゲン写真で膝軟骨のすり減りが認められても、痛みをほとんど感じない人がいる。反対に、あまり変形していないのに激しい痛みを訴える人がいる。どうしてなのか。

「ひざ痛・変形性膝関節症〈最新最強〉自力克服大全」(文響社)の著者で、アレックス脊椎クリニック(東京都世田谷区)の吉原潔院長が言う。

「痛み方に差がある理由のひとつに、膝関節を支えている筋肉の力があります。そのため、変形性膝関節症の治療の現場では、膝の筋力トレーニングが重視されています。実際に、膝関節がすり減っても、運動療法によって膝痛が軽減する人はたくさんいます。また、運動は体重減にもつながるため、膝にかかる負担を減らす効果があります」 変形性膝関節症では「痛いから」と膝を動かさず、ひたすら安静にしていると、膝痛は悪化の一途をたどる。かといって、膝を動かし過ぎるのもいけない。「程よく運動する」ことが、膝痛の改善には欠かせないのだ。

 膝痛があったら、まず大事なのは炎症が治まるまで膝の負担を軽くして、しばらくの間は膝を休ませること。そしてある程度、膝の痛みが落ち着いたら、無理のない範囲で少しずつ運動を始め、徐々に運動の回数や強度を増やしていくことが肝心になる。

 では、膝をケアするためには、どのような運動をするといいのか。

「変形性膝関節症の患者さんには共通点があります。慢性的な膝痛のために膝を長い間、動かさなかった結果、膝周囲の筋肉が硬直したり、衰えたりしていることです。私はこうした患者さんのために、変形性膝関節症を克服するエクササイズとして4つのステップを考案しました。現在、膝痛がない人にも、予防として実践してもらいたいと思います」

《ステップ①》

「膝ゆるめ」…膝周囲の筋肉を柔軟にして、膝の動きの柔軟性を取り戻す。全4種類あるが、ここでは2種類のストレッチを紹介する。

■膝裏タオルつぶし

 膝を支える太ももの前面と裏面の硬直を取る効果がある。

①あおむけに寝て、膝裏に丸めたバスタオルを置く。

②バスタオルを片方の膝裏で(最大限の力で)押しつぶす。太ももの前面を意識しながら行う。

 これを左右の足で10回繰り返すのを1セットとして、朝・昼・夜の1日3セット行う。

■爪先リフト

 すねの筋肉とふくらはぎの筋肉をほぐして、膝関節を安定させる効果がある。

①膝を完全に伸ばして床に座る。腰の横に両手を着いて、体を支える。

②左右の足首(足の甲)を動かして、爪先を上げたり、下げたりする。

 これを10回1セットとして、朝・昼・夜の1日3セット行う。

《ステップ②》

「膝トレ」…膝関節を支えている太ももの筋肉を鍛えることで、膝への負担を減らして痛みを和らげる。2種類の筋トレがある。

■テーブルスクワット

 太もも前面の筋肉を鍛えて、膝を安定させて膝への負担を減らす。

①テーブルの前で背筋を伸ばし、ひじを直角に曲げるようにテーブルに着ける。腰が丸まらないように注意。膝の高さくらいの椅子を後ろに置いておく。

②膝を曲げながら、椅子に座るようにお尻を3秒かけてゆっくりと下げていく。

③お尻が椅子にわずかに触れたら、座らずに3秒かけて①の姿勢に戻る。

 これを10回繰り返し1セットとし、週3~4セット行う。

■背中ブリッジ

 太ももの前面と裏面の筋肉を鍛え、下半身の筋肉のバランスを整え、膝を安定させる。

①あおむけに寝て、両膝を立てる。両手は体の脇に置き、頭は床に着けて持ち上げない。

②膝が直角になるように、お尻を持ち上げ、その姿勢を30秒間キープする。これを2回行うのを1セットとして、週に3~4セット行う。

 次回は、《ステップ③~④》を紹介する。

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