病気を近づけない体のメンテナンス

膝<下> 運動で変形性膝関節症を改善 O脚やX脚で乱れた下肢バランスを矯正

写真はイメージ
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 加齢とともに膝の軟骨が徐々にすり減っていく「変形性膝関節症」。

 進行すると骨の形が変わって靱帯がゆるみ、関節が徐々に変形していく。それによって痛みが出やすくなる。

 変形性膝関節症では「痛いから」と膝を動かさず、ひたすら安静にしていることはタブー。ずっと膝を動かさないでいると、膝周囲の筋肉が硬直したり、衰えたりして、逆に膝痛を悪化させてしまうからだ。

「ひざ痛・変形性膝関節症〈最新最強〉自力克服大全」(文響社)の著者で、アレックス脊椎クリニック(東京都世田谷区)の吉原潔院長が言う。

「膝痛があったら、炎症が治まるまで膝の負担を軽くして、しばらくの間は膝を休ませることは大切です。しかし、ある程度、膝の痛みが落ち着いたら、無理のない範囲で少しずつ運動を始めてください。変形性膝関節症の治療では、『ほどよく運動する』ことが膝痛の改善には欠かせません」

 そこで変形性膝関節症を克服するエクササイズとして、吉原院長が考案したのが4つのステップだ。

 前回では、《ステップ①》膝周囲の筋肉を柔軟にして、膝の動きの柔軟性を取り戻す「膝ゆるめ」。《ステップ②》膝関節を支えている太ももの筋肉を鍛えることで、膝への負担を減らして、痛みを和らげる「膝トレ」と、2つのステップのエクササイズを紹介してもらった。

 続いて今回は《ステップ③~④》を紹介してもらう。

 両足をそろえて立ったとき、両膝が外側に湾曲して、左右の膝の内側が接しないものを「O脚」。

 反対に、足が内側に湾曲し、膝同士がぶつかり合ってしまうような状態を「X脚」という。

 O脚やX脚になると、膝関節の内側か外側のどちらかに偏って体重がかかるので、膝の関節軟骨の片側がすり減って、変形性膝関節症を発症しやすくなる。

「日本人に特に多いのがO脚で、膝の内側の関節軟骨がすり減ります。X脚は、膝の関節軟骨の外側がこすれ合ってすり減ります。O脚やX脚は、膝周囲の筋肉を鍛えることで矯正できます。それが《ステップ③》の『膝正し』になります」

 O脚やX脚で乱れた下肢バランスを矯正し、膝を正しい位置で安定させて痛みを和らげる。

 これには2種類の運動がある。

■枕つぶし

 太ももの内側の筋肉である内転筋を鍛え、膝を安定させ、O脚やX脚を軽減する。やり方はこうだ。

①椅子に座り、膝の間に枕を挟む。両足は肩幅に開く(枕の代わりに、リハビリで使用するボールを使ってもいい)。

②両膝に最大限の力を入れて、枕をギュッと押しつぶしたまま5秒間キープしてから力を抜く(椅子に座らず、膝を伸ばして床に座って行うのでもいい)。

 これを10回行うのを1セットとして、1日に3セット行う。

■ゴロ寝足上げ

 お尻の側面や太ももの外側の筋肉を鍛え、立ったり歩いたりしたときに股関節を安定させて、膝がブレないようにする。

①横向きに寝て、下側の足の膝を軽く曲げる。下側の腕は曲げて、頭を乗せる。

②上側の足を真っすぐに保ったまま、できるだけ高く持ち上げて5秒間キープする。そして、持ち上げた足を元に戻す。

 これを左右の足で10回ずつ行って1セットとし、1日3セット行う。

「変形性膝関節症の人は、膝を曲げるストレッチを行って、膝関節の可動域(動く範囲)を広げることが大切です。しかし、膝を曲げると痛みが出るので、なかなかストレッチを続けることができない人もいます。そんな人にお勧めなのが、入浴時に浴槽に漬かって、膝が十分温まったところで行うストレッチです」
《ステップ④》は、浴槽の中で行う「ふわ曲げストレッチ」。患部を温めることにより、筋肉や靱帯の緊張がほぐれて可動域が広がりやすくなる。また、血流がよくなるので、痛みのもととなる発痛物質の除去を促して、痛みが軽くなるのだ。次のような手順で行う。

①湯船に漬かり十分に膝を温めたら、立て膝で湯船のフチにつかまる。

②その状態でお尻をゆっくり下げていく。

③できる範囲でお尻をかかとに近づけ、わずかに「きつい」と思う位置で5秒間キープ。①の姿勢に戻る(爪先を立てて行うと、膝への負荷が高まり、ストレッチの効果がさらに高まる)。

 これを10回繰り返すのを1セットとし、週に3~4セット行う。

 無理せずに、できる範囲で実践してみよう。

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