名医が答える病気と体の悩み

空腹ではないのに「お腹がグーグー鳴る」のは病気でしょうか

内科医の青木厚氏
内科医の青木厚氏(提供写真)

 お腹がグーグーやゴロゴロと鳴る現象を「腹鳴」と呼びます。口から取った食べ物は胃を通り、小腸や大腸などの消化管で消化・吸収されます。腸は常に伸びたり縮んだりする収縮運動を繰り返し、消化管の管腔に空気や胃液、腸液などを送り込んでいます。

 この収縮運動は、胃腸の働きを調整する十二指腸から分泌されるホルモン(モチリン)の血中濃度が上昇することで起こります。そうして消化した食べ物を腸の中を移動させ、便を体外へ排出しています。この一連の運動を「蠕動運動」と呼びます。蠕動運動で生じる音が、「腹鳴」なのです。

 実は、蠕動運動は空腹時にも起こっています。胃や腸の壁に残った食べ物のカスなどを掃除するためです。ただ、音が鳴るかどうかは体質によります。胃腸の動きが活発な体質の人なら、空腹時でも満腹時でも関係なく音が鳴るケースがあるのです。音の鳴り方や大きさもさまざまで、普段よく鳴る人でも、鳴るときと鳴らないときがあります。

 実は「空腹だからお腹が鳴る」という根拠はないのです。ただ、比較的、胃に内容物がたまっているときは空気が通りにくいため、満腹時は音が鳴りにくいことも考えられます。胃や腸に空気や液体が入っている状態によって音の大きさに違いが出ることもあるかもしれません。いずれにしても、音が鳴っているなら、消化管がきちんと動いている証拠なので、安心してください。

 ちなみに「腹鳴」は消化管の動きによるものですから、意識して止めることは難しい。アメをなめたり、お茶を飲んだりして、気にしないようにするのがいいかもしれません。

 まれにですが、病気によってお腹が鳴るケースもあります。たとえば「腸閉塞」です。その場合、腸内に詰まった内容物が、腸の内壁にこすれるように動くときに金属音のようなものが生じます。

 このときは耐えられない痛みも併発しますから、金属音に気づく前に不調を感じます。

▽青木厚(あおき・あつし) 1969年長野県生まれ。福井医科大学、自治医科大学大学院修了。40歳で舌がんを患った経験から、専門の内分泌代謝の知識を生かして、日本ではあまり認知されていない、栄養・代謝によるがん治療・がん予防をライフワークとしている。現在、あおき内科さいたま糖尿病クリニック院長。

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