最期は自宅で迎えたい 知っておきたいこと

40代でがん転移 小さな子供を2人残し…「幸せだった」が最期の言葉

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 安堵したのもつかの間、翌年には右脚の付け根に激痛を感じ、病院で検査。結果、右骨盤リンパ節から右尿管、そして周りの組織を巻き込んでの大きな再発病変が認められました。それからは徐々に患者さんの容体が悪化し、余命3~6カ月との宣告を受けるまでとなりました。

 その段階で仕事は辞め、福祉サービスに頼るようになるのですが、病気療養は何かと物入りなことばかりで、しかも小さなお子さんを抱えての生活ではなおさらです。40代なので介護保険は使えるのですが、子どものための食事の用意などは、本人の介護保険で賄えません。それでも母子3人で少しでも長く過ごしたいという患者さんの希望から、私たちの在宅医療がスタートしたのでした。

 まず私たちが取り組んだのは、強い痛みが少しでも和らぐように調整することでした。また、訪問看護さんやケアマネジャーさんたちのチームにお願いして、子どもたちの食事の用意や遊び相手になってもらうようにもしました。上のお兄ちゃんは8歳になったばかりで甘えたい盛りですが、具合の悪いお母さんを前に途方に暮れるばかり。そしてお母さんはそんな我が子を力なく抱きしめるしかできませんでした。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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