進化する糖尿病治療法

中性脂肪の「本当の数値」を知っていますか?正常だと思っていたら…

飲み食い控えると値は下がる

 中性脂肪の場合、健康診断や人間ドックで示される数値が、「本当の数値」とは限りません。つまり、正常範囲内だと思っていたら、そうでない可能性もあるのです。

 中性脂肪は、血液中に存在する脂質です。コレステロールも同様に血液中の脂質ですが、役割が異なります。中性脂肪は、私たちが活動するためのエネルギー源です。一方、コレステロールは細胞の内外を隔てる生体膜(細胞膜)を構成する成分であり、ホルモンや胆汁酸の材料でもあります。

 中性脂肪もコレステロールも、私たちが生命活動を維持する上で重要な役割を担っています。だからある一定量は必要なのですが、血液中で過剰な状態が続くと、動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳卒中といった重大病のリスクが高くなります。

 中性脂肪が基準値以上になると、脂質が異常に多いということから、「脂質異常症」と診断されます。かつては高脂血症といわれていた病気ですね。もうひとつの脂質であるコレステロールが多い場合も、脂質異常症です。脂質異常症は空腹時採血で、「中性脂肪150㎎/デシリットル以上」「LDL(悪玉)コレステロール140㎎/デシリットル以上」「HDL(善玉)コレステロール40㎎/デシリットル未満」のいずれかに該当する場合に診断され、血糖値や高血圧などの数値も総合的に見て、どのような治療が行われるかが決定されます。

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坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

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