東洋医学を正しく知って不調改善

漢方や鍼灸は新型コロナなどの感染症にも効果があるのか

写真はイメージ

 漢方や鍼灸というと、「緩やかにじっくりと効く」「特に慢性病に効果がある」というイメージをお持ちの方が多いかもしれません。確かにそのような面もありますが、実は急性症状や感染症にも十分効果を発揮します。

 実際、風邪をひいた時など、進んで鍼灸治療を受ける方がいますし、よく知られる漢方薬、葛根湯を飲まれる方も少なくありません。

 実はこの葛根湯は非常に昔から知られた処方薬。3世紀の中国で、疫病のさまざまな病態に対する薬物治療書として編まれた「傷寒論」という本があるのですが、この中でも登場します。書名にある「傷寒」とは、当時の中国で大流行した急性の発熱を伴う疫病を指しています。

 ちなみに総合感冒薬や咳止め、喘息の治療に広く使われている「エフェドリン」という薬がありますが、これなどは1885(明治18)年に日本の薬学者の長井長義(ながい・ながよし)が、世界で初めてこの葛根湯に含まれる麻黄から抽出し命名したものでした。

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天野陽介

天野陽介

日本医学柔整鍼灸専門学校鍼灸学科専任教員。北里大学東洋医学総合研究所医史学研究部客員研究員も務める。日本伝統鍼灸学会、東亜医学協会、全日本鍼灸学会、日本医史学会、日本東洋医学会所属。

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