名医が答える病気と体の悩み

唇がひどく荒れやすい…どんな病気が考えられるのか?

皮膚科専門医の松浦佳奈氏
皮膚科専門医の松浦佳奈氏(提供写真)

 唇は皮膚が柔らかくデリケートなため、荒れやすい部位です。唇が荒れて割れるような症状があるようなら、いくつかの病気が考えられます。

 もっとも多いのは「口唇炎」で、唇が乾燥し、皮がむけたり、唇が腫れたりして、炎症や湿疹が現れます。唇は粘膜が薄いため水分が蒸発しやすく、外からの刺激を受けやすい。たとえば唇をなめるクセがあったり、唇が日焼けして湿疹が出るケースもあります。もともとアトピー性皮膚炎がある場合、肌質が弱いので唇が切れやすく、口唇炎になる方が多くみられます。

 さらに、かんきつ類、ナッツ類、パイナップル、香辛料といった刺激のある食べ物、洗顔料や口紅などの刺激性物質、義歯などが唇に接触することで炎症を起こすケースもあります。「接触性皮膚炎(接触口唇炎)」と呼ばれています。

 いずれも治療は保湿をしっかりすることと、炎症によって真っ赤にただれる場合はステロイドの塗り薬を処方しています。

 ほかに「口唇ヘルペス」があります。ヘルペスウイルスの感染によって、唇に小さな水疱ができる病気です。風邪やストレスによる免疫力の低下が原因になり症状が出ます。春や秋の季節の変わり目に起こりやすい傾向があります。症状は、ぴりぴりとした違和感や熱感があり、唇が腫れて赤くなります。これは、ウイルスが内部で炎症を起こしているためで、痛みを生じます。

 発症後、数日で水ぶくれができます。通常は1週間程度で乾燥して水ぶくれが治まり、かさぶたになったら回復のサインです。ただし、口唇ヘルペスは一度感染すると、神経細胞まで感染し、免疫が落ちるたびに再発するリスクがあります。

 治療としては、ウイルスの増殖を抑える抗ヘルペスウイルス薬が処方されるケースが多く、また2次的に細菌感染の疑いがあれば抗生物質が使われることもあります。市販の軟膏もありますが、まずは皮膚科で診断してもらい、症状に合った薬を処方してもらいましょう。さらに、唇から口内に差し掛かる唇の内側に、治りにくい口内炎ができた場合は要注意です。免疫が原因の病気のサインである可能性があります。全身性の炎症性疾患の「ベーチェット病」や、大腸の炎症性疾患の「潰瘍性大腸炎」が考えられます。

 このように唇や周辺の症状から、全身の病気を発見するケースもあるので、見逃さないようにしましょう。

▽松浦佳奈(まつうら・かな) 2012年聖マリアンナ医科大学医学部医学科卒業後、18年には同大学病院皮膚科医長を経て、21年4月から二子玉川皮フ科副院長。

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