がんと向き合い生きていく

いきなり週単位、月単位と言われても…胃がん患者の心の叫び

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 トイレが大変です。看護師さんを呼ばないと出来ないのです。

 医師の回診は、土日はなくて、待っていた月曜日の朝にありました。若い女性の医師でした。

「どうですか?」

「はい」

「お腹が張りますか?」「はい」

 思い切って、私は聞きました。

「先生、私、死にますか?」

「誰だっていつかは死にます」

「そうじゃなくって、私はあとどのくらいで死にますか?」

「あなたの場合は、黄疸の進み具合によると思います。週単位の方もおられますし、月単位の方もおられます。年単位とは言えないと思います」

 なんだか、この返答で医師はうまく逃げたなと思いました。

 ずっと働いてきて、何も悪いことはしていないし、理不尽のような気がします。こんな、いきなり週単位、月単位と言われても、何も出来やしない。入院していて、そんなこと言われても理不尽です。何か出来る状態なら、やりたいことをやって終われるけど、動けずにベッドにいて、週単位……そう言われても……でも、自分から聞いたのですからね。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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