淋菌感染症は、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)による感染症で、性器クラミジア感染症と並んで患者数が多い性感染症です。
淋菌は主に男性では尿道炎、女性では子宮頚管炎を起こします。淋菌の潜伏期間は2~7日といわれています。ただ潜伏期間については個人差があるので、この期間中に症状が表れなかったからといって感染していないということではありません。病気が進行すると、男性では精巣上体炎、女性では卵管炎や骨盤内炎症性疾患を起こすケースもあります。
クラミジア感染症と同様、近年は性行動の多様化を反映して、咽頭や直腸の炎症など性器外の感染例も増加しています。淋菌感染症の20~30%はクラミジア感染を合併しているため、淋菌への感染が判明した際にはクラミジアの検査も必ず行う必要があります。
淋菌感染症の治療には、もちろん抗菌薬が使われるのですが、近年は薬が効かない「薬剤耐性淋菌」が増えていて、問題になっています。ペニシリン系やテトラサイクリン系、ニューキノロン系といったさまざまな種類の抗菌薬に耐性となっているのです(多剤耐性)。
10年ほど前は、マクロライド系の「アジスロマイシン」という抗菌薬が淋菌に有効でした。この抗菌薬はクラミジア感染症も治療することが可能なので、1つの経口薬だけで2つの感染症を同時に治療することが可能だったわけです。しかし現在は、淋菌への効果が期待できなくなってしまったため、複数の抗菌薬による治療が必要になっています。
現在、日本で使用されている抗菌薬のうち、淋菌に有効とされているのは「セフトリアキソン」と「スぺクチノマイシン」という2つの注射薬だけとされています。ただ、セフトリアキソンの耐性菌なども報告されているため、今後も動向を見守る必要があります。
治療効果がある抗菌薬が減ってきていることも含め、性感染症は予防がとても大切です。淋病を予防するには、性行為の最初から最後までコンドームを使用することが有効とされています。
感染症別 正しいクスリの使い方