認知症治療の第一人者が教える 元気な脳で天寿を全う

アルツハイマー病を発症しても… 人生はまだまだ終わりじゃない

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

■健康な部分を伸ばして衰えた部分をカバーする

 そしてもうひとつ、多くの方に伝えたいと私が強く考えているのは、アルツハイマー病をはじめ認知症と診断されても、「人生は終わりじゃない」ということです。

 医学はめざましく進歩しています。ところが、脳については「まだわからないことが多い」と医学者ならみんなわかっています。神経細胞一個一個の働きや脳内の地図は明らかになり、基礎的な機能は解明されているものの、脳全体で見れば解明されているのはほんの一部にしか過ぎません。

 ましてや個人の脳の領域となると、ほぼ解明されていない。一人一人の性格や個性がどのようにつくられ、社会的な反応にどう違いが生じ、発達や環境要因、生活歴、ストレスがそこにどんな影響を与えているのか。

 アルツハイマー病は、脳の神経細胞の内外にアミロイドβというタンパク質がたまって神経細胞が死滅し、記憶をつかさどる海馬の辺りを含め広く萎縮していく病気です。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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