がんと向き合い生きていく

同じがん、同じステージなのに…なぜ自分だけが再発したのか

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

「頑張れと言われてもな……そりゃあ頑張るけど……。例えば、米の凶作でどん底に落とされた時でも、頑張って努力して乗り越えてきた。先人の成功例はいろいろな本でも読んだ。でも、健康を損ねると、自分の頑張りや努力ではどうにもならないこともある。どう頑張ればいいのだろう?」

 Rさんはそう思いました。

 また、「それにしても、担当医から『きっと再発することはないだろう』と言われながら、自分は再発し、同じステージのFさんは再発がない。どこに何の違いがあるのだろうか?」と疑問に思いました。

 次の外来診察の際、Rさんは思い切って担当医にこの疑問をぶつけてみました。すると、こんな答えが返ってきました。

「その違いが、私たちにも分からないのです。この病院では、ステージ2では75%の方は再発していません。病理の検査結果でも、がん細胞の増殖に関係するタンパク質の『ハーツー(HER2)』は陰性でしたし……。それよりも、まずは治療を一緒に頑張りましょう。リンパ節転移が完全に消えた方もいらっしゃいます」

 Rさんはうなずいて、しっかり治療を受けるしかないと思いました。

4 / 4 ページ

佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

関連記事