翌日、S子さんは学校でコーラス部の友人に折り鶴の話をしてみました。すぐに折り方を知りたいと、5人の同級生に広がります。そして3週間後の夕方、たくさんの束になった千羽鶴を、同級生3人でAさんの自宅に届けました。
Aさんのお母さんはとても喜んで、翌日、入院中のAさんに届けると約束してくれました。
その日になって、お母さんが千羽鶴を病院へ持ち込むと、担当の看護師さんは困った顔で言います。
「病室はきれいな空気になるようにしてあります。千羽鶴はホコリがつきますからね。白血球が減ると、肺炎を起こしやすくなるので、患者さんのそばには置けないのです」
お母さんは、病室の窓から見える廊下にでも置けないかと粘ってみましたが、やはりダメで千羽鶴は仕方なく持ち帰りました。
そう言われてみれば、よほどのことがないとAさんの病室には誰も入れなくなっています。お母さんがAさんに会う時は、まず準備室で帽子をかぶり、マスクをつけ、ガウンを着てから入室する手順になっていました。
がんと向き合い生きていく