役に立つオモシロ医学論文

コロナ禍の“旅行控え”はうつ病リスク? 精神医学専門誌で報告

仁川国際空港を歩く旅行者(C)ロイター

 否定的な感情から意識をそらすことは、抑うつ症状の緩和に効果的です。その意味で、旅行は抑うつ症状の改善が期待できるかもしれません。これまでに報告されている研究でも、旅行に行く機会の多い人は、生活の満足度が高いだけでなく、前向きな気分と関連していることが報告されています。

 一方で、旅行に行くことができる人は、そもそも生活の満足度が高く、うつ病を患っている人も少ない可能性を指摘できます。そんな中、旅行とうつ病リスクの関連性について検討した研究論文が、精神医学の専門誌に2022年8月10日付で掲載されました。

 この研究では、韓国に在住している8524人(平均63歳)が対象となっています。研究参加者は、過去1年間に旅行をしていない人と、少なくとも1回の旅行をした人に分けられ、うつ病の発症リスクが比較されました。なお、研究結果に影響し得る年齢や性別、就労状況、世帯収入などの因子について、統計的に補正して解析しています。

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青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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