がんと向き合い生きていく

医学生のリポートを読んで思い出す医学部受験での出来事

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 私は年1回、某大学医学部生に「がん診療における患者の生と死」という題で、講義をする機会をいただいています。

 2年前はコロナ禍で中止、その後はWEB講義となりました。講義の1カ月後に、約100人の学生が、授業の感想、医師を目指した理由、どんな医師になりたいかなどを書き込んだA4の紙の束が私のもとに届きます。これを読むのが楽しみです。

 このリポートでは、医師を目指した理由として「家族ががんで亡くなったことがきっかけになった」と書いてくる学生が毎年3、4人います。

 また、「なるべく死に関わらない科に進みたい」と書いた学生もいました。

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 だいぶ昔のお話ですが、自分の大学受験のことをいろいろと思い出します。

 私は高校生の頃から「人間とは何か?」を大テーマにしていて、「医学部こそが人間を知る近道」と考え、医学部受験を決めました。しかし、経済的な面で国公立大以外は目指せません。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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