バイデン政権はコロナの非常事態を、5月11日に解除すると発表しました。しかし混乱も予想されています。
今回の決定は「コロナは既に深刻ではない段階に入った」という判断によるものです。とはいえ、アメリカではいまだ1日500人もの人がコロナで亡くなっていて、この数はインフルエンザが最悪の年の2倍。しかし、2022年半ばまで死因3位だったコロナは、今では5位以下になっています。多くの人がワクチン、または罹患することで免疫を得ているのも、深刻ではないと判断された根拠です。
一方で市民は、コロナをインフルと同じように捉え始めています。ニューヨークの地下鉄ではマスク姿はさらに減って、1割を割ることさえあります。
では非常事態解除で何が変わるのでしょうか? これまで自宅や街角で簡単に無料で受けられた検査、治療、ワクチンが、多くの場合有料になるということです。解除を数カ月先に設定したのも、これに伴う医療機関などでの混乱を防ぐためです。
予想される混乱の大きな理由が、アメリカの複雑な保険制度です。
保険に入っている人の6割は民間医療保険、2割が公的医療制度のメディケア(高齢者)、2割がメディケイド(低所得者)と別れ、保険によっても州によっても受けられるサービスが違い、とてもわかりにくいシステムです。
さらに国民皆保険ではないアメリカは、保険に入っていない人が人口の1割近い3000万人もいます。非常事態中は無保険でも無償だったワクチンや検査が、州によっては受けられなくなることになります。
また非常事態の予算により、低所得者向け保険の加入者が増えましたが、解除されれば再び保険を失う人が出てくると見られています。
コロナのエンデミックと同時に、アメリカでは保険制度をめぐる論争が、再び大きくなる可能性もあります。