新型コロナウイルス騒動は沈静化に向っているが…動物ウイルス学者はなぜ「絶望」したのか

緊急事態宣言で繁華街からは人が消えた(C)日刊ゲンダイ
京大医生物学研究所准教授に聞く(1)

ウイルス学者の絶望」(宝島社新書)が話題になっている。著者はウイルス学一筋に研究を続けてきた京都大学医生物学研究所の宮沢孝幸准教授だ。一体、何に絶望したのだろうか?

「この3年間、世界中が新型コロナに翻弄されてきました。私はこういうときに役立ちたいと思い、長年研究してウイルスに関する数多くの論文を書いてきました。今回のコロナ騒動も、何も新型コロナの研究を新たにしなくても、既存の知識を生かせば解決できると考えていました。それなのに新型コロナによる混乱を収めることに役に立っていない。これまでの研究が生かされなかったことを悲しく思っています」

 宮沢氏といえば、2020年以来、その対策についてテレビ、雑誌、SNSなどで持論を発信してきたことで知られる。その「歯に衣着せぬ発言」は熱烈な支持者を集める一方で、強い反発も浴びた。それはウイルス学の専門家として科学的態度で素直な意見を述べたに過ぎなかったのだが、その真意が「正しく伝わらなかった」せいだと言う。

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