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肩の治療の選択に迷った場合は経験者の話を聞くのがベター

写真はイメージ

 18歳の男子学生が、肩の脱臼で私の外来を訪れたときのお話をしたいと思います。

 彼はK大学のテニス部に属しており、それまで計8回の脱臼を経験していました。診察時、最善の治療法として提案したのが手術です。以前、本欄でも紹介しましたが、脱臼は何度も繰り返し、特に活動性が高い若い男性はその傾向が強いからです。「脱臼8回」ということがまさに、それを表しています。

 しかし、男性は首を縦に振りません。「脱臼の根本的治療は手術だけ」と説明し、再発の高さを過去の研究結果から数字で示しても、「手術は嫌。しかし、肩の脱臼は治したい」の一点張りです。

 私が常々思っているのは、患者さんが医師側の提案をかたくなに拒否する場合、その深層心理に何があるのかを読み解くことが非常に重要である、ということ。それを無視して「◎◎という治療法がいい」と述べても、一方通行になってしまいます。

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森大祐

森大祐

整形外科全般診療に長年携わる。米国トーマスジェファーソン大学で人工肩関節の臨床研究を行い、2000例超の肩関節手術を経験。現在は京都下鴨病院で肩関節や肘関節、スポーツ障害患者に診療を行う。サイトで整形外科疾患の情報を発信。

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