上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

睡眠時無呼吸症候群の治療装置CPAPが心臓を守り若さを保つ

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 睡眠時無呼吸症候群(SAS)に代表される「睡眠呼吸障害」は、心臓疾患の大きなリスク因子であることが知られています。今年3月には「循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン」の2023年改訂版も発行され、睡眠と心臓疾患の関係はますます重視されているのです。

 今回の改訂版でも、睡眠呼吸障害はさまざまな循環器疾患に合併して循環器疾患の悪化に関与するだけではなく、循環器疾患の発症そのものに関与するとしています。また、睡眠呼吸障害の合併頻度は、肺高血圧症が89.0%、治療抵抗性高血圧が83.0%、心房細動が81.4%、左心室の収縮機能が低下した心不全が76.0%とのデータもあります。

 海外の研究では、重症の睡眠時無呼吸症候群の患者を追跡調査したところ、12年間で15%以上が重大な心血管系疾患を起こしたが、CPAP(シーパップ)を使っている人は健康な人と同レベルまで心血管死亡のリスクを抑えられたと報告されています。心臓疾患の予防や治療において睡眠呼吸障害の改善は欠かせないといえるでしょう。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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