第一人者が教える 認知症のすべて

「海馬の萎縮=アルツハイマー病」とは限らない 慎重な鑑別が必要

写真はイメージ
アルツハイマー病か、それ以外の「治らない認知症」か

 病院で「治る認知症(二次性認知症)」ではない、つまり「現時点では治らない認知症(一次性認知症)」と診断された場合、その大半を占めるアルツハイマー病か、またはそれ以外か、を見極めることは重要です。

 なお、治る認知症については、〈表〉を参照してください。1965年に正常圧水頭症による認知症がシャント手術で改善することが報告されて以来、「treatable dementia(治療可能な認知症)」という概念が注目を集めるようになりました。

 2011年に米国立老化研究所とアルツハイマー協会が提案した国際診断基準(NIA-AA)では、「ほぼ確実なアルツハイマー病」として次の項目を挙げています(一部、わかりやすい表現に変えています)。

【診断基準】

 認知症があり、以下のA~Dを満たすこと。

<A>数カ月から年単位でゆっくり進行する

3 / 5 ページ

新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

関連記事