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【高麗人参】糖尿病や心筋梗塞の抑制効果の報告 脱毛や冷え性の予防にも

高麗人参
高麗人参

 高麗人参は、和名をオタネニンジンというウコギ科の薬用植物の根っこを乾燥させたもの。私たちがパッとイメージするニンジンはセリ科の植物なので種から違います。最も古いとされる中国の漢方薬書においては、高いランクの生薬として高麗人参の効能が記されています。日本では奈良時代の天平11年(739年)にすでに聖武天皇の手に高麗人参が渡った記録が残っていますが、広めたのは江戸幕府の8代将軍・徳川吉宗とされています。朝鮮半島から苗を入手し栽培して、増やした御種(ニンジンの根)を各地の大名に配布。栽培を奨励し、オタネニンジンとも呼ばれる由来となっているそうです。

 現在、長野県、福島県、島根県で栽培されていますが、数は少なく希少なため、そのほとんどを輸入に頼っているのが現状です。

 韓国では、日本と同様に父母の日があり、贈り物をする習慣があります。その際、カーネーションとともに父母の日に人気がある贈り物が、なんと高麗人参! 古来、滋養強壮剤の漢方として利用される高麗人参ですが、その高い健康効果から両親への感謝と健康を願う気持ちを伝えるために贈られるのでしょう。

 種類は「水参」「白参」「紅参」の3つ。水参は畑から掘ったままのもので、白参は水参の皮をむいて乾燥させたもの。紅参は水参を長期間保存させるために蒸気で蒸した後で乾燥させたもの。この過程がサポニンを増やすため、紅参のサポニン量が最も多いとされます。

 サポニンには、脂肪燃焼を促進し糖尿病を予防する効果、皮膚を守る働きなどのアンチエイジング効果に加え、自律神経を整えて低血圧を予防する効果があるとされていますが、高麗人参自体を摂取した研究報告も多数あります。カナダでは動脈硬化の指標低下、日本では心機能障害のリスク低下の効果が報告され、韓国では1日3グラムの高麗人参を8カ月間摂取すると心筋梗塞の予防効果が得られたとの研究があります。また、12週間にわたり高麗人参エキスを1日100ミリグラム摂取させた実験でも、風邪やインフルエンザにかかる人が少なく、ウイルスや細菌から体を守る細胞が活性化することもわかっています。

 その他、脱毛や冷え性の予防に働くことも報告されていますので、季節の変わり目で体調を崩しやすいこの時季に召し上がってみてはいかがでしょうか。

古谷彰子

古谷彰子

早稲田大学大学院卒。早稲田大学時間栄養学研究所招聘研究員、愛国学園短期大学准教授、アスリートフードマイスター認定講師。「食べる時間を変えれば健康になる 時間栄養学入門」「時間栄養学が明らかにした『食べ方』の法則」(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。

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