老親・家族 在宅での看取り方

在宅医療開始初日に…「長いお付き合いになると思っていたところでした」

写真はイメージ

 在宅医療を開始するにあたってご家族が一番に心配されることはなにかといえば、それは最期の看取り。タイミング良く在宅医師はいてくれるのか? 救急車を呼んだ方がいいのか? 死亡診断は? これから起こるであろう状況を想定し、不安を募らせる方は少なくありません。

 在宅医療の患者さんの多くは、終末期を2~3カ月間過ごし、旅立ちます。その間に、最期の心構えも含めてご家族とお話しする時間がありますから、慌てることなく穏やかな看取りに至るケースがほとんどです。ただ、在宅医療を開始された退院初日に、最期を迎えるケースも、もちろんあります。

「こんにちは、退院お疲れさまでした。ちょっとお話と採血を行わせていただきますね」(私)

「おしっこがまだ出てないようで、開眼もなく、なかなか」(訪問看護師=訪看)

 その方は、二次性骨髄線維症と重度の心不全、腎不全、そして認知機能低下が見られる70代の男性。奥さまと2人暮らしです。なお二次性骨髄線維症とは、血液細胞の増殖や分化の調節に深くかかわる遺伝子の異常で、造血細胞に代わって線維組織が骨髄中に増え、異常な形状の赤血球が生産されたり、貧血や脾臓の腫大が発生する病気です。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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