老親・家族 在宅での看取り方

92歳男性患者…誤嚥を繰り返しても肉まんや餃子を口から食べたい

患者や家族と一緒に悩んで考える

「水分の方がのみ込めないですね」(娘)

「サラサラしたものがのみ込めないっていうのは、塊じゃないと奥に行かないってことで、ゼリーとか、とろみをつけるとかで塊にした方がいいと思います」(私)

 そこにわずかでも可能性があるのなら、患者さんとご家族のご希望をかなえるために一緒に悩んで考えます。

「あーって言ってみてください」(私)

「ああー」(患者)

「大丈夫そうです。喉に引っかかった時はがらがらって聞こえるんですけど、それはないですから」(私)

 いったんこの段階で食事を許可しましたが、その後もまた誤嚥を繰り返すように。でも患者さんは食事をあきらめず、奥さんは肉まんや餃子を食べさせ続けているのです。

 在宅医療を始められる方にはさまざまな思いやこだわりをお持ちの方がいらっしゃいます。たとえそれがすごくささいなことであっても、ご本人にとっては大切なことだということを、私たちは理解しています。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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