役に立つオモシロ医学論文

コロナのパンデミックが子供の発達を遅らせる?日本の研究報告

発達に影響を受けた子供たちを特定し支援を

 子供たちが豊かな感情や主体性を身につけ、新しい能力を発達させる過程には、生活環境や身近な人との関係性が重要です。しかし、コロナ禍を通じて、子供たちの生活環境や人間関係にもさまざまな変化が生じました。そんな中、コロナ禍の経験と乳幼児の発達の関連性を検討した研究論文が、米国医師会が発行している小児科専門誌に、2023年7月10日付で掲載されました。

 日本人によるこの研究では、認可保育所に通う1歳、または3歳の乳幼児887人が対象となりました。乳幼児の発達に関するデータは、2017~21年に実施された年次調査によって収集され、1歳で初回調査を受け3歳で再調査を受けた乳幼児が447人、3歳で初回調査を受け5歳で再調査を受けた乳幼児が440人でした。

 発達の度合いは乳幼児発達スケールと呼ばれる点数表を用いて、保育所に勤務する保育士が評価を行い、コロナ禍を経験した乳幼児と、コロナ禍を経験していない乳幼児で、発達の度合いが比較されました。また、解析に影響を与え得る世帯年収、出生時の体重、両親や同居家族の就労状況などの因子について、統計的に補正して解析されました。

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青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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