やはり、手術(治療)後のトラブルを防ぐという点から考えると、心臓手術で使う人工物はなるべくきれいで正常な組織に設置するのが最善です。だからといって、組織にそれほど異常が見られない、比較的状態が良好なうちに手術を実施するのは大きな間違いです。手術後のマイナス面が多いため、本来であればまだ手術する必要がなかったり、明らかな症状が出ていない段階の患者さんの手術を行うべきではありません。
それなのに近年は、そうした患者さんに対する“やらなくてもいい手術”を実施する医療機関が増えているのが現状です。経営的な観点から、早いうちから患者さんを囲い込みたいという思惑があるのは確かですが、一方では患者さん自身が「手術をしてほしい」と希望して来院するケースが増えているのです。
つい最近も、中学2年生のお子さんがいる親御さんから、こんな話を耳にしました。その息子さんは「大動脈二尖弁」という心臓の構造異常がありました。本来なら開閉する弁構造が3枚ある大動脈弁が、生まれつき2枚にしか分離していない病態です。弁が2枚だからといって日常生活に支障を来すわけではなく、そのまま一生を終えるケースは少なくありません。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」
“やらなくてもいい”心臓手術を行う医療機関が増えている
本人の希望で手術を受けた中学2年生の患者は…