SGLT2阻害薬というのは、尿へのブドウ糖の排泄を増加させることにより、血糖を低下させる作用を持つ糖尿病治療薬です。日本では2014年から次々と発売され、今では5種類以上が使用されています。
この薬は最初それほど注目されませんでした。尿から出るブドウ糖の量を増やしただけでは、確かに血糖は少し下がるでしょうが、糖尿病自体の病状を改善するような効果は、期待できないと思われたからです。そればかりか、尿のブドウ糖が増えることは、おしっこの感染症を増やす可能性がありますし、尿の量が増えることにより、脱水が進行するという危険もあります。つまり、それほど効果は期待できない一方で、副作用などのリスクは高い薬のように思われたのです。
ところが、15年に発表された一本の論文で、その考え方は大きく変わりました。
それが、15年11月26日付(ウェブ掲載は9月)で、ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)という一流の医学誌に掲載された、エンパグリフロジンというSGLT2阻害薬の臨床試験結果をまとめた論文です。