当連載の初回で、全国の著名なリハビリ病院から、もうよくならないと診断された寝たきりの男性患者さん(当時62歳)が、私が院長を務める「ねりま健育会病院」でリハビリを行い、3カ月後にはひとりで身の回りの簡単な生活動作と用事ができるまで回復して自宅に帰ることができたケースをお話ししました。
この男性の場合もそうでしたが、廃用症候群などで心身機能が大幅に低下している患者さんのリハビリでは、「座らせる」「立たせる」「歩かせる」「コミュニケートする」作業を全力で行います。半年以上ずっと寝たきりだった患者さんでも、まずは「座る」「立たせる」「コミュニケートする」ことから始めます。ベッドに横たわった姿勢から、上半身を起こし、足の踵を床に着け、できるだけ背もたれに頼らずに座った姿勢をキープしてもらうのです。
ただ、長期間寝たきりだったわけですから、座るだけでも最初はとてもできません。姿勢を維持できずにそのまま横に倒れ込んでしまいます。上半身を起こして立たせると数十秒もすると、血圧が一気に下がり、血の気がサーッと引いてフラフラして意識消失の状態になってしまうのです。そうなった時点で、座らせて立たせる訓練はいったん中断し、すぐ横になってもらいます。
正解のリハビリ、最善の介護