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糖尿病の人だけが発症する「糖尿病性認知症」とはどんな病気?

羽生春夫氏(提供写真)

 糖尿病患者さんにだけ発症する「糖尿病性認知症」をご存じでしょうか。これまで糖尿病が認知症の発症リスクになることは知られていましたが、約15年前に糖尿病だけが原因になる認知症があると明らかになりました。

 症状は一般的なアルツハイマー型認知症(AD)と異なり、初期の段階では記憶力の低下は比較的少なく注意力や意欲の低下、遂行機能の障害が現れやすい。そのため、料理の手順が分からなくなったり、最後まで完成できないようになるのです。

 ADは脳の海馬が障害されるのに対し、糖尿病性認知症は脳全体が障害されます。糖尿病の罹病歴が10年以上で長く、血糖値のコントロールが悪い人に発症しやすい特徴があります。糖尿病を伴う認知症のうち約10%にみられ、当院では年に20~30人の方が糖尿病性認知症と診断されています。

 70代前半の女性は、かかりつけ医に初期のADを疑われ当院を受診しましたが、画像や脳脊髄液検査からはADの所見はみられない。ただ認知機能検査を行うと注意力や遂行機能に低下がみられ、血糖値やHbA1cの値も高く、糖尿病の罹病歴も20年と長かった。血糖コントロールを目的に2週間教育入院をし、退院後は家族の協力のもとスポーツジムに通ったり食事の内容を変えたところ、血糖値は下がり糖尿病性認知症の症状も落ち着きました。

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