教えて放射線治療 ドクター黒﨑に聞く

膵臓と肺のがん患者に多い質問「なぜ、手術はダメで放射線治療ならいいの?」

黒﨑弘正氏(提供写真)

 初診の患者さんからしばしば受ける質問のひとつに、「『動脈に接しているので手術できません。放射線治療科に行ってください』と言われました。どういうことですか?」があります。質問される患者さんの多くは、膵臓がんや肺がんの患者さんです。

 手術では、腫瘍だけでなく、その周りの組織も取ることになります。腫瘍が動脈に近く、絡んでいると、出血リスクを考え手術ができないとの判断になります。

 膵臓がんを例にとると、膵臓のすぐ近くに腹腔動脈・上腸間膜動脈および静脈、そして大動脈などの血管が走っています。腹腔動脈のことをよく医療スタッフは「セリアック」、上腸間膜動脈は「SMA」、大動脈は「アオルタ」と呼んでいます。

 では、そのような大きな動脈に絡んでいる場合、放射線治療はできないのでしょうか? いえ、そんなことはなく、一般的に動静脈に絡んでいる腫瘍に対して照射しても、出血して大問題になることは極めてまれです。なので、放射線治療により腫瘍を殺し、縮小させることには意味があると考えています。つまり、一般的に放射線治療のほうが手術より適応が大きいといえます。

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黒﨑弘正

黒﨑弘正

江戸川病院放射線科部長。1995年、群馬大学医学部卒。医学博士。日本専門医機構認定放射線専門医、日本放射線腫瘍学会放射線治療専門医。JCHO東京新宿メディカルセンターなどの勤務を経て2021年9月から現職。

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