秋に長引く苦しい咳 疑うべき6つの要因

 気温が急に下がった上に、相次ぐ台風で、体調を崩しがちの人も多いだろう。特に多いのが「咳(せき)」だ。もともと、秋は“喘息(ぜんそく)が増える季節”ともいわれている。咳について、知っておくべきことを、国際医療福祉大学臨床医学研究センター・足立満教授(山王病院アレルギー内科)に聞いた。

<1.3週間が区切り>

「咳が出る場合、原因をチェックすることが重要です。その目安になるのが期間で、3週間がひとつの区切りになります」
 3週間未満なら、風邪をはじめとするウイルス感染によるものが大半。一般のクリニックで対応できるし、場合によっては市販薬という手もある。3週間を超えたら、呼吸器の専門医がいるクリニックや病院を受診することを考えた方がいい。

<2.喘息は子供のものだけではない>

 3週間を超える長引く咳で最も疑われるのが、喘息だ。
「喘息の患者数は、成人・小児を合わせて400万~500万人ともいわれていますが、80%は成人になって初めて発症する方々。喘息は子供だけの病気ではないのです」
 ゼーゼーヒューヒューという喘鳴が喘息の特徴だが初期段階では喘鳴がないこともあり、専門医の診断が必要な場合も。
「今でも年間2000人近くが喘息で亡くなっています。難治性や重症化を避けるには、早期診断・治療が不可欠です」

<3.喘鳴なければ初期か咳喘息の可能性>

「咳喘息は風邪をきっかけに発症することが多い。早く治療すれば完治することもありますが、治療が遅れると、完治が困難な喘息に移行することもあるので要注意です」
 喘息も咳喘息も、治療は吸入ステロイドまたは吸入ステロイドと気管支拡張剤の合剤を用いるのが基本だ。アレルギー性鼻炎を合併しているケースでは、ロイコトリエン受容体拮抗薬も併用する。最近では、これらの薬はかかりつけ医でも処方してくれる。気軽に相談を。ただし、服用しても効果がなければ、専門医を受診したほうがいい。

<4.吸入ステロイドは怖がる必要なし>

「ステロイドは副作用が強くて怖い」と考えて、喘息や咳喘息で吸入ステロイドを処方されているのに、勝手に服用をやめる患者が少なくない。
「内服や注射のステロイドは骨粗しょう症などの副作用がありますが、吸入ステロイドで用いる量はごく少量である上に、薬効成分は肺だけで全身に影響を及ぼさないので、ステロイドで心配される副作用が生じることはほとんどありません」
 喘息の治療は、「発作を起きないようにする」「起きた発作を止める」が2大柱。特にポイントとなるのは前者で、吸入ステロイドの毎日の吸入は、それを可能にする。
「喘息は完治が困難ですが、薬をきっちり使うことで、健康な人と同じ生活を送ることができます。吸入ステロイドへの偏見を捨て、正しく利用してください」

<5.喫煙者は1~3以外の危険がある>

「現在ならびに過去に喫煙している人は、咳が実はCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の急性増悪だったということも珍しくありません。急激に呼吸困難に陥ることがあるので、“いつもと違う咳”と感じたら、3週間を待たずに、すぐに専門医を受診してください」

<6.重い病気や呼吸器以外も原因に>

「まずは、肺がんです。肺がん患者は喫煙者が多数を占めると思われていますが、最近では非喫煙者も無縁ではありません。また肺結核などの感染症も減ってはいません。呼吸器以外の病気では、胃食道逆流症、副鼻腔炎、うっ血性心不全などが考えられます。呼吸器の専門医なら、念頭に置いて診察するので、見逃しません」
 
 たかが咳、と思ってはいけない。