糖尿病リスク3割減!? 高倉健も実践する「シリアル食」

 糖尿病の予防には食物繊維が効果的だといわれている。中でも、<穀物のシリアルによる摂取がもっとも糖尿病リスクを下げる>という研究報告がある。

 昨年12月に開催された世界糖尿病会議で中国の研究グループが発表したもので、<1日10グラムの摂取で発症リスクが30%も減少する>という。同じ食物繊維でも、野菜、果物、豆類によるものは、逆にリスクが増加している研究もあり、発症リスクとの関連性は低いとしている。

 米国の研究でも、<穀類から摂取する食物繊維が1日2.8グラム未満の人は、1日5.8グラム以上の人よりも2倍、糖尿病になりやすい><1日8.1グラム以上、穀類から食物繊維を摂取する人は、1日3.2グラム未満の人よりも、糖尿病の発症率を30%減らせる>といった報告がある。

 食物繊維は「水溶性」と「不溶性」に大別される。水溶性は、こんにゃく、海藻類、果物などに多く含まれ、腸内で水分を取り込んでゲル化し、脂肪や糖質の吸収を抑える働きがある。消化吸収のスピードを遅くするので、食後の血糖上昇が緩やかになる。

 一方の不溶性は、穀類、野菜、豆類などに多い。腸内で水分を取り込んで数倍に膨れて体積を増やし、腸の蠕動(ぜんどう)運動を促すので、便秘や痔(じ)の予防にも効果がある。トウモロコシ、小麦、オーツ麦、玄米などから作られている穀物のシリアルに含まれているのも、多くは不溶性だ。

 横浜創英大名誉教授の則岡孝子氏(栄養学)が言う。
「不溶性食物繊維は、消化吸収することができないので、胃の中の滞在時間が長くなり、腸壁が刺激されることで腸を通過する時間が短くなります。便通を促す効果が高いので、糖質などのエネルギー吸収を少なくさせ、有害物質を素早く体外に排出する働きもある。繊維質の食品は咀嚼回数が増え、満腹感も持続するので、糖尿病と関わりが深い肥満も予防します」

 厚労省が推奨している成人男性の食物繊維の摂取量は1日あたり19グラム。日本では男性の摂取量が平均14.3グラムと不足しがちな上、穀物からの摂取が減ってきている。糖尿などの生活習慣病が気になる人は、穀物のシリアルを試してみる価値はありそうだ。

■高倉健も毎朝食べている

 糖尿病専門医で「しんクリニック」の辛浩基院長は言う。
「糖尿病患者の食事指導において食物繊維は欠かせないものです。腸管でブドウ糖の吸収をブロックして血糖値の上昇を緩やかにするため、食後に分泌されるインスリン量が少なくて済み、血糖コントロールに効果的なのです。他の食事と一緒に取ることにより、全体のGI値を下げ、血糖値を穏やかにする効果があるのではないでしょうか」

 GI値とは、グリセミック指数ともいわれ、炭水化物が消化されて糖に変化する速さを相対的に表す数値のこと。GI値が低い食品は、血糖上昇が穏やかなためインスリンが少なくて済む。逆にGI値が高い食品は、急激に血糖値が上昇してインスリンがたくさん必要になるため、糖尿病には大敵だ。

 オートミールや小麦ふすまなどを使ったノンシュガーのシリアルは、GI値が45~55と低い。やはり糖尿病予防の効果はありそうだ。

 シリアルの中には、大麦などの水溶性食物繊維を多く含んだ穀物を使ったタイプもある。
「牛乳やヨーグルトなどをかけて食べると、腸内細菌の働きを高めて免疫力をアップさせたり、糖の吸収を穏やかにする効果も期待できます。食物繊維を取りすぎるとミネラルが排出されてしまう恐れもあるので、ビタミンやミネラルが豊富な野菜を一緒に食べると理想的です」(則岡氏)

 最近は俳優の高倉健(82)が健康のためシリアルを食べているとテレビで明かして話題になった。毎朝「グラノーラ」(麦、玄米、トウモロコシなどの穀物を焼き、ドライフルーツやナッツなどをミックスしたもの)を食べているという。

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