心電図じゃ見つからない 「心臓異常なし」は信用できない

 健診や人間ドックで「心臓は異常なし」と言われていても、安心してはいけない。それらで行われる“通常の検査”では、心臓の病変を完全には見つけられないというのだ。心臓の画像診断を専門にする「心臓画像クリニック飯田橋」の寺島正浩院長に話を聞いた。

■前触れもなく起こる心筋梗塞で米国人の50%が死亡

 健診はもちろん、「心臓が心配なので診てほしい」と受診した場合の検診でも、一般的に行われるのは心電図と胸部レントゲンだ。しかし、寺島院長は「これらは不整脈や心不全の診断には有効ですが、心臓そのものを視覚化することができず、心臓の血管の状態を見るには向いていません」と指摘する。

 心筋梗塞などの病気は、冠動脈(心臓を養う血管)に脂質が沈着してプラークを形成し、血管が徐々に狭窄(きょうさく)する動脈硬化が基礎。そのプラークが突然破裂し、心筋梗塞が起こるのだ。

 脂質沈着、狭窄、プラーク付着といった血管の動脈硬化による変化は、心電図と胸部レントゲンではチェックが不可能。何で見ればいいかというとMRIだ。
「MRIでは、磁石と電波を使って心臓の細かい断層写真を撮り、3Dで立体表示します。これによって、血管の詰まり具合を初期の段階から調べられる。CTでももちろん可能ですが、X線の出力が大きく、放射線被曝が問題になる上、副作用のリスクがあるヨード造影剤が必須なので、患者さんへの負担を考えると、ベストはMRIです」

 しかし、心臓のMRIを“普通に”行う医療機関はほとんどない。
「MRIは体のさまざまな部位を調べる高度な医療機器です。緊急性の要するものから検査に用いられるので、必要と判断されなければ、MRIを受けたくても予約は数カ月先に回されるでしょう」

 心臓は1分間に60回動く臓器なので、検査の中でも画像診断の難しさはトップ。さらに、心臓のMRIは1回撮るのに1時間ほどかかる。MRI装置は非常に高額なので、次々と検査を行わないと、病院の経営にかかわる。これらの理由から、狭心症や心筋梗塞が高い確率で疑われる時を除いて、「まず行われるのは心電図と胸部レントゲン」というのが現状なのだ。

「ところが、心筋梗塞は何の前触れもなく起こる。米・国立衛生研究所が何万人ものデータを解析した結果では、心筋梗塞の50%が最初の発作で死亡しています。米国人に比べて日本人は心筋梗塞死が人種的に少ないですが、それでも約30%が最初の発作で亡くなっている。これを回避するには、発作を起こす前に、自分の心臓の状態を正しく知ることなのです」

「心臓画像クリニック飯田橋」では、心臓画像診断に特化しているので、予約を迅速に入れられ、結果もその日のうちに分かる。“心臓検査のプロ”がそろっており、全国の心臓MRI検査の1割を占めるほどの検査数(年間)を誇るため、症例数が多いのも強み。

 そのため、これまで検査で全く異常が見つからなかった人が、ここで検査を受けて、すぐに治療が必要なほどの心臓の血管の詰まりが見つかったケースが少なくないという。

「先日いらした55歳の患者さんも、一刻の猶予もならない状態でした。すぐにタクシーで東大病院を受診してもらい、その日のうちにカテーテル治療を受けたのです」

 心臓の血管は、50%程度詰まっていても、自覚症状がなく、心電図やレントゲンでは分からないというから驚きだ。

「家系に心臓病や突然死の人がいる、肥満、メタボ、喫煙経験があるという人は、ぜひ一度は心臓MRIで調べるべき」

 あなたはどうだろう?

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