表面は汚染状態…マスクは正しく着用しないと逆効果の恐れ

 インフルエンザが猛威を振るっている。予防のためにマスクをしている人は多いが、正しい使い方を知っている人はほとんどいないのではないか。ヘタすると逆効果になりかねない。

 ある総合病院では、インフルエンザの季節に備え、医師や看護師、職員のほとんどが予防接種を受け、マスクもしっかり着用している。しかし、そうやって防備している医師や職員をはじめ、マスクをしている患者がバタバタとインフルエンザにかかり、感染症の疑いがある患者を診察する時以外はマスクをしない医師はピンピンしているという。

 防備している医師や看護師がなぜ感染するのか? 「マスクを誤って使用していることが大きな原因と考えられます」と、東邦大学医療センター佐倉病院循環器科の東丸貴信教授がこう続ける。

「医療用マスクを使用する目的は大きく2つあります。ひとつはインフルエンザウイルスなどの病原体の侵入を防御するため。もうひとつは、せき、くしゃみ、会話などで周囲に病原体をまき散らさないようにするためです。マスクは病原体を含む飛沫を捕獲するので、ほとんどの病原体はマスクを通過することができません。しかし、マスクの上では生き続けることができます。つまり、マスクの表面は大量のウイルスが吸着した汚染状態にあるといっていい。そうした認識がないままマスクの表面を触ってしまうと、かえってウイルスを拡散させたり、感染拡大のリスクを高めてしまうのです」

 世界的に大きな影響力を持つ米疾病対策センター(CDC)は、マスクを使用する際は感染防御と病原体の拡散予防のために〈マスクの表面は汚染されているので触らないように〉という警告を出している。

 また、世界保健機関(WHO)も、マスクを着用する際、効果を引き出すための正しい使用法について以下のような勧告を出している。

(1)口と鼻を注意深くマスクで覆い、顔とマスクの間のすきまを最小限にするようにぴったり装着する。

(2)マスクの使用中はマスクに触れることを避ける。使用したマスクに接触した時(例えばマスクを外す、あるいは洗う時)は、必ずせっけんと水、またはアルコールベースの擦式手指消毒薬を使用して手を清潔にする。

(3)マスクが湿ってきたら、すぐに新品の乾燥したマスクと交換する。

(4)使い捨てマスクの再利用は行わない。使い捨てのマスクは1回使うごとに捨て、外したらすぐに廃棄する。

 日本人は世界的にも指折りのマスク好きだといわれていて、実際に医療用の高性能マスクを着用している人をそこらじゅうで見かける。しかし、CDCやWHOの勧告通り、マスクを注意深く扱っている人はほとんどいないのが現状だ。もったいないからと、使い捨てマスクを何度も使い回している人もたくさんいる。

 これでは、逆にウイルスをかき集めて感染リスクを高めているだけ。マスクをしていればなんとなく安心だから……なんて人ほど危ないのだ。

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