レーシック普及で注目 「老眼手術」のメリット・デメリット

直径3.8ミリのリングを片目の角膜に挿入する手術も/(C)日刊ゲンダイ
直径3.8ミリのリングを片目の角膜に挿入する手術も/(C)日刊ゲンダイ

 40代半ばを過ぎると気になりだすのが「老眼」だ。老化現象だからしょうがないと諦めている向きもあろうが、今は「老眼手術」がある。果たしてどんな手術なのか? 安全なのか? 期待した結果が得られるのか? レーシック・老眼手術の第一人者に聞いた。

「現在、世界の老眼人口は17億人。人口増加や高齢化、生活環境の変化などで、今後ますます増えると予測され、2020年には21億人が老眼になるといわれています」

 こう言うのは、南青山アイクリニックの井手武副院長だ。

「治療法としては薬、電気刺激などがありますが、近年レーシックの普及とともに注目を集めるようになったのが老眼手術です」

 そもそも老眼(老視)は、近くの物を見る時に使う目のピント調節力が、加齢で衰えて起きる現象。カメラでいえばオートフォーカス機能にガタがきている状態だ。本来ならばこのピント調節力自体を正常に戻すべきなのだが、これという決定的な治療法はない。そこで、レンズの部分に手を加えて、見えるようにしようというのが老眼手術だ。

「強膜や水晶体に対するアプローチもありますが、まだまだメジャーではありません。角膜に対するものが老眼手術では多いですね」(※)

「手術には大きく分けて2種類あります。“片目だけハッキリ見えるようにする手術”と“遠くも近くも幅広く見えるようにする手術”です。どちらも慣れるまで時間がかかり、結局、元に戻す手術をする方もいらっしゃいます。後者は遠くも近くも見える代わりに、どちらにもピントが完全に合っていないので、ボンヤリとした感じに見えます。“映像の質”はかなり下がります」

 手術の方法は複数あり、どれも一長一短がある。安全性については問題ないというが、費用は片目で十数万円から60万円以上とけっこう高い。ここまでして手術をする必要があるのか? と正直思ってしまう。

「おっしゃる通りです。残念ながら、近視レーシックのように“手術が終わったら世界がクッキリ見える”というようなことは今のところありません。夢の手術ではないのです。それでいて費用は安くありませんからね。ここが老眼手術の壁で、相談に来られても8割の方が手術をしないで帰られます」

 同クリニックでは、メリット、デメリットを理解し、必要時にはメガネをかけてもかまわないという“度量”がある人にだけ手術を行っているという。

 逆に、何が何でも老眼手術を勧めるようなところは警戒した方がよさそうだ。

 ちなみにレーシック手術をした人は、人為的に遠視状態にしているので、老眼が起こりやすいといわれている。今回紹介している手術は、角膜の厚さなどの条件はあるものの、レーシック手術経験者でも受けられるそうだ。

(※)近視の人は、遠くが見えない代わりに、ピント調節機能を使わなくても近くの物が見えやすい状態になっているので、老眼になりにくいといわれている。

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