治らない「過敏性腸症候群」はお腹を揺らすと劇的改善

写真はイメージ/(C)日刊ゲンダイ
写真はイメージ/(C)日刊ゲンダイ

 過敏性腸症候群(IBS)は、検査をしても腫瘍や炎症などの器質的疾患がないのに、下痢、便秘、腹痛、下腹部が張るといった症状が見られる。「IBSの意外な原因が分かってきた」と話すのは、国立病院機構久里浜医療センターの水上健医師(内視鏡検診センター部長)だ。

 水上医師の元には、重症のIBS患者が全国から訪れる。「何をしても良くならなかった」という訴えがほとんどのため、従来とは違う治療法を模索するうち、いくつかの「事実」にたどり着いた。

【IBSの下痢型】

 これは男性に多く、ストレスが原因の下痢に非常に効果的な薬「イリボー」が承認されている(男性のみ)。しかし、イリボーで良くならない患者もいる。原因のひとつとして考えられているのが「胆汁に起因するIBSの下痢型」だ。

「食事をすると、胆嚢から胆汁が十二指腸に分泌され、小腸で再吸収されて残りが大腸に流れます。胆汁には下剤と同じような作用があるため、小腸での再吸収が悪いと、下痢しやすくなる。虫垂炎で小腸を切除した人によくあったのですが、それ以外の人にも起こることが分かってきたのです」

「食後30~60分で下痢する」「食べなければ下痢をしない」「ストレスと下痢の関連性が考えにくい」の、特に最初の2つに該当するなら、疑われる。

「胆汁を吸着するコレステロールを下げる薬を飲めば、すぐに下痢しなくなります。薬をやめれば元の症状が出てきますが、食後30~60分はトイレに行けるようにし、無理な時だけ薬を服用するなど、必要に応じた使い方をするといいでしょう」

■日本人の8割が「ねじれ腸」

【IBSの便秘型】

 IBSの便秘型は、言い換えると「腹痛を伴う便秘」。

「患者の約半数は、自分でも可能な工夫で排便できるようになります」

 最初に考えるべきは、「ねじれ腸」の人の運動不足だ。

「腸が複雑にねじれ、途中で引っかかって便が出にくい。便は出ないけれど腸は動いているのでお腹が痛い。大腸内視鏡検査をしていると、だいたい8割の日本人がこのねじれ腸です」

 体質なのでねじれ腸を変えることはできないが、「腹痛を伴う便秘」なら、腸が動いているので、下腹部のマッサージで引っかかった便を出やすくすると、容易に改善できる。

「あおむけで腸を揺らすイメージで、両手で下腹部を小刻みに押したり、立った状態で体をひねる体操をする。運動はラジオ体操が最適です。何十年と便秘の腹痛で苦しんできた人も、マッサージやラジオ体操で、翌日には大量の便が出て腹痛が良くなったと報告します」

 水上医師は、「過敏性腸症候群にはストレスや腸の形、そして胆汁再吸収障害などいくつか原因がある。現在それぞれにとても有効な治療ができるようになったので、腫瘍や炎症を除外するためにも専門医を受診してください」と話す。

 自己判断で市販薬……はやめるべきだ。

関連記事