町医者が指南 薬の「付き合い方」と「減らし方」のコツ

写真はイメージ/(C)日刊ゲンダイ
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「日本人は医師も患者も薬が大好き。でも、あきらかに飲み過ぎ。それが不調の原因になっている」と言うのは、「抗がん剤 10の『やめどき』」(ブックマン社)などの著書がある長尾クリニック・長尾和宏院長(写真)。薬とどう付き合うべきか。インタビューした。

 口が乾く、ふらつく、便秘する。この3大症状が患者さんの口から出てきたら、「もしかして、薬のせい?」と考えます。

 お薬手帳を見せてもらうと、やはり多種類の薬を飲んでいる。高齢者の患者さんでは、10種類前後の薬は“普通”です。

 しかもよく見ると、同じような効果を持つ薬を何種類も飲んでいる。複数の病院にかかり、何の薬を飲んでいるかをチェックせずにそれぞれの医師が処方しているから、薬の内容がダブってしまうんですね。患者さんは、薬には必ず副作用があり、不調の原因になるかもしれないなんて、全く考えていない。「薬をたくさん出してくれる医師がいい医師」と思い込んでいる人もいて、愕然としてしまいます。

 開業して20年になり、多剤投与の弊害を日々痛感しているので、私はくどいくらい「何の薬をどれだけ飲んでいますか」と聞きます。しかし、うっかり忘れていることもある。「頭がフラフラする」という訴えで来院した患者さんの時、最初は脳梗塞を疑い焦りました。血圧は上が80を切っている。そこでもしや、と思い詳しく聞くと、なんと、降圧剤を8剤も飲んでいた! さらに、安定剤や睡眠薬なども加わり、合計20種類も。「どうして降圧剤だけで8つも?」と尋ねると、「黙っていたら先生が出してくれた」と言うだけです。

 これだけ飲めばふらついて当たり前です。体の状態に影響を与えそうな薬だけ数種類残し、いらない薬をやめてもらったら、すぐにふらつきは消えました。

 薬を何種類も飲んでいる方は、医師や薬剤師の知恵を借り、見直すべきです。その場合、それぞれの専門医に頼っても解決しない場合が多い。医師には縄張りがあるから、別の医師が出している薬を勝手に切ることはできません。

■かかりつけ医に“一元化”する

 薬剤師にだけ頼るのも無理がある。現実問題として、医師から処方された薬に対し、薬剤師が横やりを入れるのは困難。たとえ、「これは必要ないのでは」と思っても、黙っているでしょう。

 薬を減らしたいなら、“かかりつけ医”に一元化するのが一番です。もし大病院にかかっているなら、地域の“かかりつけ医”へ紹介状を書いてもらう。薬が出る窓口をできるだけ一つに集約したうえで、薬のトータルコーディネートをしてもらうのです。

 風邪の初診で、あれもこれもと出す医師は、薬が好きな医師と思って間違いない。「血圧(あるいは糖尿病、痛風)は薬を一生飲まなくてはダメ」なんて言う医師も、薬擁護派でしょう。一生必要な薬なんてありませんから。

 生活習慣がもとで発症した病気は、生活習慣を改めることでいつかはやめられると考えるべきなんです。今はやりの嘔吐・下痢や風邪に対する抗生物質は不必要です。さらには、喫煙習慣をやめられないのに咳止めを飲む、食生活を改善できないのに便秘薬を飲む、も……。薬を飲む前にやるべきことがあるでしょうが、と思うのです。

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