突然走る電撃痛…冷たい風で顔が痛む「三叉神経痛」とは?

寒さが身に染みる/(C)日刊ゲンダイ
寒さが身に染みる/(C)日刊ゲンダイ

 冷たい風があたった時、顔を洗った時、ひげをそった時、歯を磨いた時、物を噛んだ時──。何げない瞬間に突然、顔の半分に痛みが走ったら、「三叉神経痛」が疑われる。原因の9割は加齢による血管の蛇行で、顔の感覚を脳に伝える三叉神経が血管に触れてショートし、痛みが生じる。冷たい刺激がきっかけになることも多い。日本医科大学付属病院脳神経外科・森田明夫教授に詳しく聞いた。

 顔が痛む疾患には、虫歯、顎関節症、副鼻腔炎、帯状疱疹、群発頭痛などさまざま。三叉神経痛もそのひとつだが、ほかの疾患と違う典型的な症状が、「顔の半分に」「突然起こる」「電撃痛」だ。

 電撃痛とは、虫歯などの時に感じる、キーンと脳まで突き抜けるような痛み。痛みの持続時間は数秒で、1回で治ることもあれば、キーンキーンキーンと連続することもある。冒頭に挙げた「冷たい風があたる」「顔を洗う」「ひげをそる」「歯を磨く」「物を食べる」時に起こる。

「激痛ですが、治ると何の痛みも残らない。しびれなどもありません。それも三叉神経痛の特徴です。歯や鼻の病気では、顔の痛みが続いたり、激痛が治まってもしびれなどが残ったりすることがよく見られます」

 とはいえ、症状からでは判断しづらい三叉神経痛もある。最初に受診したのが歯科で、抜歯したが痛みが治まらず、三叉神経痛の治療で痛みが消えた、というケースも珍しくない。

「だから、“顔の半分”“突然”“電撃痛”があるなら、MRI検査も受けるべき。三叉神経が血管に触れているか画像で確認できる。特に若い人は、脳腫瘍や脳梗塞で三叉神経や血管が圧迫されて起こっていることもあり、それをいち早く見つけられます」

■薬物治療で7~8割改善

 三叉神経痛の治療は、まず抗けいれん薬などによる薬物治療だ。

「これで7~8割の患者さんが良くなります。効果が出るのも早く、服用の翌日か翌々日には痛みが消えます。ただ、毎日服用する必要がある。中には数カ月だけ服用し、その後は薬を飲まなくても痛みが治まる人もいますが、ほとんどは数年後、早ければ1年後に痛みが出てくるので、その都度薬を使うことになります」

 薬物治療で効果を得られなかったり、副作用が強く服用ができない人は、神経ブロック注射になる。

「それでもダメなら、微小血管減圧術という手術が検討されます。ここまでいくのは患者さんの1割くらい。全身麻酔で頭蓋骨に穴を開け、顕微鏡で観察して三叉神経に血管が当たらないようにします。手術を受けた人の9割は症状が改善します。また、高線量の放射線で痛みを感じる神経を壊すガンマナイフという選択肢もあります。ただ、健康保険が適用されず、効果も手術に劣ります」

 実は、三叉神経痛には、典型的な症状を伴わず、MRI検査でもはっきり診断できない上、鼻や歯などさまざまな疾患のすべての可能性も否定されるケースがある。

「非定型三叉神経痛といい、三叉神経痛と同じく薬物治療を行います。痛みが消えれば、三叉神経に問題があったと判断します」

 残念ながら、症状が改善されなければ、三叉神経によるものではないとされ、内科やペインクリニック、精神科など複数の科とともに治療にあたるという。

関連記事