みのもんたに巨額賠償請求 「水飲み健康法」は死を招く

血液サラサラは幻想
血液サラサラは幻想(C)日刊ゲンダイ

 有名司会者の「水を飲もう」という発言を信じて健康を害したという主婦の話題が、先日スポーツ紙で報じられた。近年、“水飲み健康法”がよく言われるが、東京都健康長寿医療センター顧問・桑島巌医師(高血圧外来/循環器専門医)は、「ある条件の人にとっては、水をたくさん飲むことが死を招くことだってあります。即刻やめていただきたい」と警鐘を鳴らす。詳しく聞いた。

 くだんの記事の内容は、みのもんた(70)が、かつて司会を務めていた日本テレビ系情報番組「午後は○○おもいッきりテレビ」と「おもいッきりイイ!!テレビ」で「水を飲もう」と勧めたところ、80代の主婦が実践し、習慣化。それによって、うっ血性心不全などを発症したというもの。主婦は、テレビで発言したみのに責任があるとして、約6700万円の損害賠償を求めて提訴している。

 コトの行方は別にして、水をたくさん飲むと、そんな事態に陥るものなのか?

「心臓は、全身に血液を送り出すポンプの働きをしています。心臓の働きが低下して肺や末梢組織に水分がたまり、むくみや息苦しさが生じるのがうっ血性心不全です。水をたくさん飲むと血液量が増えますから、ポンプは一層働かねばならず、負担がかかります。ところが、もともと心臓病や高血圧があるとポンプが正常に働いていない状態なので、水分は十分に送り出されず、うっ血性心不全が起こるのです」

 桑島医師は、“ポンプが正常に働いていない人”、つまり心臓病や高血圧がある人は、「むしろ水分を制限しなくてはならない」と話す。

「循環器専門医で、これらの疾患のある人に水分の大量摂取を勧める人はほとんどいないでしょう。さらに、腎臓疾患を抱えている人も、水分摂取は要注意です」

■1日2リットルは多すぎる

 もちろん、汗を大量にかく夏やサウナに入った時は別。夏の猛暑では脱水症状に陥らないために、意識して水分摂取をしなくてはならない。

「それであっても、よく言われる“1日2リットル”は多すぎ。適切な量と飲み方を主治医に相談し、決して過剰摂取にならないようにしなくてはなりません。猛暑以外であれば、喉が渇いた時に飲めば十分。あとは風呂上がりにコップ1杯の水を飲めばよろしい」

 うっ血性心不全を起こしてしまうと、程度によって治療に時間がかかったり、最悪の場合、「死」という結末を迎えることになる。

「生活習慣は万全で薬もきちんと飲んでいるのに血圧が下がらない人が、“水飲み健康法”を実践していたケースもあります。健康にいいことをしているようで、反対の結果を招いているのです」

 では、健康な人なら、水分摂取は健康維持に役立つのか? これに対しても、桑島医師は疑問を投げかける。

「『水で血液をサラサラに』といいますが、そもそも血液にサラサラやドロドロという概念は本来はありません。血液を固まりにくくするためには、動脈硬化対策が不可欠。水をたくさん飲んでも対策にはなりません。尿の量が増えるだけです。それよりも禁煙、高血糖、高血圧、高コレステロール、肥満解消に取り組む方が先決です」

 桑島医師は、患者から「テレビで言っていた」と反論されるたび、「テレビと私と、どちらを信じるのですか?」と返しているそうだ。