健康オタクが脳内出血 親類から“異変”指摘が発覚のきっかけ

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 東京・墨田区に住む個人投資家、竹澤耕四郎さん(仮名、61歳)は、自他ともに認める健康オタクだ。

 たばこはやらず、酒もほとんど飲まない。血圧やコレステロール値も正常である。体重はこの30年、60キロ(身長は170センチ)を1、2キロ前後する程度で、生活習慣病とは無縁な健康体を維持してきた。

 食生活は、肉類を避けて野菜が中心。主食も玄米。毎朝6時に起床し、ベランダで30分ほどのストレッチと柔軟体操を日課にしてきた。

 半年に1度、欠かさずに行う血液による各種検査の結果は、いつも「再検査不要」のサインが書き込まれている。

 日頃から、健康にこれほど気をつけているのに、想定外の病気に襲われたのは、九州から桜前線が北上してきたこの3月中旬のことだった。

「近所に住む弟夫婦から、“なんかお兄さんの言葉が少し変だよ。歩き方も前のめりだし、精密検査を受けてみたらどう?”と、言われたのです」

 心配性の竹澤さんは、すぐに自宅近くのクリニックを訪ね、診てもらった。事態は想像以上に深刻だった。

「“竹澤さん、脳に障害が起きているようです。急いだほうがいいでしょう”と言われたのです」

 同クリニックの院長はすぐに区内の総合病院に連絡した上で、次のように告げたという。

「たまたま、私と親しい脳神経外科医がおりましたから、病院で待っているようです。すぐに行ってください。ご家族も呼んでおいてくださいね」

 竹澤さんは、その足で指定された総合病院に向かい受付で妻と合流。CT(コンピューター断層撮影)などの検査を受けた後、担当医からこんな説明を受けた。

「脳内出血を起こしています。その原因は、高血圧がおよそ7割を占めます。でも竹澤さんの場合、高血圧が原因ではなさそうです。外傷など何らかの原因で脳内の血管が破れてしまい、脳の中に少しずつ出血していた。とにかく今は、原因の究明よりも治療を最優先しましょう」

「脳内出血」は、脳内の血管が破れ、大脳や小脳など脳の中で出血する。破れた血管の部位にもよるが、頭痛、嘔吐、意識障害、感覚障害、運動まひなどを起こす。

 竹澤さんの家族は、担当医から「定位的脳内出血吸引術」という手術法を説明された。その後、本人は手術室に送られた。

 同手術は、定位脳手術装置に頭部を固定して、局所麻酔をかける。両側のこめかみのあたり(頭蓋骨)に小さな穴を開け、穿刺針を挿入して脳内にあふれている血を抜くという方法だ。

「3時間ぐらいの手術だったでしょうか。私の場合は初期症状の段階で脳内出血に気がつき、すぐ手術をしたことで助かりました。治療が遅れれば、出血によって脳が破壊し、後遺症として半身不随になることもあるそうですね」

 こう言って胸をなで下ろした。

 術後、2週間の入院と言われたが、1週間で退院。今は後遺症もなく、朝早く起きて新聞の株式欄を精読する日常生活に戻っているという。

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