元“体育会系”40代は「脳梗塞」に注意 リスク高める8つの条件

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「私が医師になった20年ほど前は、40代の脳梗塞・心筋梗塞発症は“原因となる遺伝子を持っているなど特別な事例”でした。ところが今は、40そこそこで脳梗塞の患者は珍しくありません」と言うのは、東京慈恵会医科大学付属病院糖尿病・代謝・内分泌内科の坂本昌也医師だ。“血管病”の現実は、私たちの想像より深刻だ。

 同病院は、大手企業が集まる丸の内寄りの港区にある。比較的高所得者層に人気の高層タワーマンションが立ち並ぶ湾岸エリアからも近く、場所柄、30代、40代のサラリーマンの患者も少なくない。IT関連や商社に勤務し、仕事に忙殺された日々を送る独身男性も多数だ。

 坂本医師が診る患者には、あるパターンがあるという。

 中学、高校、大学のどこかで運動部(運動系のサークル)に属し、社会人になって運動をしなくなる。お金を稼ぐようになり、好きな物を食べ、飲む。かつ、車で通勤、あるいは営業で車移動。仕事が忙しいため夕食時間は遅め。空腹で夕食はたっぷり食べ、酒も飲む。睡眠不足気味……といった傾向だ。

「思い当たる患者さんが何人もいます。25~26歳で暴飲暴食を始め、その生活を続ければ、5~10年たつと“本物の糖尿病/高血圧/脂質異常症患者”が出来上がります」

 自覚症状がないので本人が気づかないこともよくある。あるいは、健康診断でひっかかっても“様子を見る”または“一時的に食事・運動療法をやってみる”程度の軽い受け止め方だ。

「その後、多忙で健診を受けなくなる。そして、何らかの症状が出て病院に駆け込むのが30代半ば。治療が開始されますが、多忙で病院に来られなくなる。そして、自覚がないまま動脈硬化が進行し、40代で脳梗塞・心筋梗塞で倒れて救急搬送になる。重症患者が比較的多い大学病院という点もありますが、条件が重なれば、誰にでも起こることだという危機感を持つべきです」

 坂本医師が指摘する「条件」とは次のものだ。

(1)運動はいつでもできると思いながらしない
(2)学生時代の「肉中心で量もたっぷり」の食事がそのまま
(3)運動不足で筋肉が脂肪に変わり肥満体形
(4)“車生活”で日常生活での活動量も減少
(5)空腹の後、夜中にたっぷり夕食を食べて血糖・脂質値の急降下、急上昇を繰り返す
(6)睡眠時間が少なく血管にダメージがある
(7)夕食の遅さ・多さと睡眠不足で朝食抜きまたは少量。空腹で昼食は多めになり、血糖・脂質値の急上昇、急降下をさらに繰り返す
(8)動脈硬化などのリスクの認識が少ない

「『家系に糖尿病や高血圧、脂質異常症、脳梗塞・心筋梗塞既往者などがいる』『外食の多い独身男性』という条件が加わると、よりリスクが高くなります」

 自分は運動部じゃなかったから……と安心してはいけない。(1)~(8)はドミノのようなもの。1つでも該当し、該当数が多いほど“40そこそこの脳梗塞・心筋梗塞”へ近づいている。

 必要なのは、ヤバイという気づきと、糖尿病、血圧、コレステロールに対する抜本的な介入だ。

「それなしには、この“ドミノ倒し”は止められない」と坂本医師は警告を発する。

 医療技術の発達で、脳梗塞・心筋梗塞で命が助かる確率は増えている。しかし、発症前の“自由な生活”に戻れるかといえば、その保証はない。コトが起こってからでは遅いのだ。

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