運動能力、発音にも影響 失うと“老化”に拍車「奥歯の守り方」

放っておけば55歳でダメになる!?
放っておけば55歳でダメになる!?(C)日刊ゲンダイ

「ハマラメ」という言葉をご存じだろうか? 実はコレ、男性の体が老化する順番を指すのだそうだ。最初に「ハ(歯)」、次に「マラ(男性自身)」、最後に「メ(目)」がダメになるという。最初に老化が表れる歯の中で、とくに気をつけたいのが奥歯だ。失うと噛む力が一気になくなり、運動能力が減少したり、発音が不明瞭になるなど老化に拍車がかかる。そればかりか病気にもなりやすい。奥歯を守るにはどうしたらいいのか?

 奥歯は歯列の最も後方にある歯で、成人の場合、左右上下に各2本(第1、2大臼歯)ずつ、計8本ある。
「その役割は、食べ物をすりつぶして消化や栄養の吸収を助けるほか、発音にも影響します。実際、奥歯を失うとハ行、ラ行の発音が不明瞭になるといわれています。噛み締められないため運動や力仕事に必要な瞬発力を失ったり、歯列が壊れて顔の輪郭が変わったりもする。脳への刺激が減り、記憶力にも関係するといわれています」

 こう言うのは自由診療歯科医師で「八重洲歯科クリニック」(東京・京橋)の木村陽介院長だ。

 それほど重要な奥歯だが、ほかの歯に比べて寿命は短い。

「永久歯の平均寿命」(平成11年厚労省の歯科疾患実態調査)によると、男性は左下顎の第2大臼歯の寿命が50歳、右下顎のそれは51歳。同じ下顎の2本の前歯はいずれも66歳だから、奥歯は前歯より15年以上も早くダメになるというわけだ。

 これは上顎の歯も同じで、前歯の平均寿命が62歳なのに対し奥歯は51~52歳と短命だ。

 あなたが6歳のとき奥歯(第1大臼歯)が永久歯になっていれば、55歳ぐらいでダメになるというわけだ。

「しかし、これはあくまでも平均値。忘れてならないのは歯はケアの仕方でその寿命を大きく延ばせることです」(同クリニックの新木志門歯科医師)

 では、奥歯の寿命を延ばすにはどんなことを心がけなければならないのか? 木村院長が言う。

「日本人が歯を失う原因の上位は歯周病と虫歯です。40歳以上で目立つのは歯周病。その対策としてお勧めしたいのが、奥歯の咬合面の一部を削ることです」

 硬いモノを口にしなくなったせいで、最近の日本人の奥歯は咬合面がすり減らず、凹凸が残ったままの人が多い。こういう人は歯ぎしりなどの横の動きで奥歯が動いてダメージを受け、歯周病になりやすいという。

「そこで、40歳を過ぎたら、咬合面の凹凸を調整するよう、一部削るのです。歯科医院で咬合調整してほしいと言えば、やってくれるはずです」(木村院長)

 咬合調整が必要か否かがわかるセルフチェック法がある。指を口の中の上顎の歯にあてがい、噛み合わせた状態で歯を横に滑らせ指の腹で歯の振動を感じる。歯の動きを感じるなら要注意だ。

 丁寧な歯磨きはもちろん、歯間ブラシでのケアを忘れてはいけない。

「よほどきちょうめんでない限り手による歯磨きを完璧にこなすのは無理。電動歯ブラシが無難です。ただし、ブラシを歯に強く押し付けるのは意味がない。できれば、音や光で警報を出してくれる最新式を選びましょう。歯と歯の隙間の大きい中高年は糸ようじでなく歯間ブラシを使うこと。奥歯用にはブラシが柄と直角になった歯間ブラシが便利です」(木村院長)

 歯磨き粉は使っても使わなくても大差はない。

「洗口剤も、寝る前に使うのはいいかもしれませんが、起きているときは唾液で流されてしまう。意味がないです」(新木医師)

 若さと健康を保ちたければ下手に運動やサプリメントなどにお金と時間をかけるより、奥歯ケアに力を注ぐべきなのだ。

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