鼻炎やぜんそくの改善も 「ダニ」エキス新薬治療の最新事情

ダニはこれからが本番
ダニはこれからが本番(C)日刊ゲンダイ

 ダニは湿度60~80%、温度25~30度、髪の毛、アカ、フケなどがある環境を好むという。まさに、これからの季節が“本番”だ。アレルギー性鼻炎や気管支ぜんそくの原因物質にもなるが、ダニを使ってそれらを根治する可能性もある画期的な治療が始まった。

「アレルギー性鼻炎の6割は、ダニが関係しています。花粉症の人が、ダニアレルギーも持っていて、症状がよりひどくなっているケースは珍しくありません」

 こう指摘するのは日本医科大学付属病院耳鼻咽喉科・大久保公裕教授だ。

 大久保教授によれば、原因物質がはっきりしているなら、それにターゲットを絞った治療を行うことがアレルギー治療の基本だという。しかし、これまで日本では、ダニだけをターゲットにした治療は行われていなかった。

「ダニのアレルゲン免疫療法で日本人にはアナフィラキシー(アレルギー反応による急性症状)を起こす人が多かった。そのため、ダニを含む混合物のハウスダストから抽出したエキスを皮下注射する免疫治療が一般的でした」

 アレルギーの原因物質であるアレルゲンを少量ずつ定期的に数年間かけて体内に入れ、アレルゲンへの反応を抑える治療が「免疫療法」だ。ハウスダストには、チリ、ダニ、ホコリなどさまざまなアレルゲンが含まれている。だから従来の治療法ではターゲットが分散されてしまい、“ダニ一本”よりも確実性が劣っていた。それが今年4月から、ダニの中でも特に問題になっているチリダニから抽出したタンパクをもとにしたエキスを皮下注射する免疫療法が始まった。

■皮下注射と舌下錠の2通り

 さらに5月には、このダニエキスの錠剤を舌の下で溶かし、体内に吸収させる舌下錠も承認された。

「血液検査でダニアレルギーが確認された人が対象になります。ダニエキスの免疫療法によって、8割くらいは抗アレルギー薬がいらない程度まで改善するとみられています」

 免疫療法は長期間にわたるので、皮下注射を何度も行うのは負担が大きい。そこで、舌下錠が登場した形だが、舌下錠は「アレルゲンはダニだけ」という人向け。複数のアレルゲンを持っていて、それらに対する免疫療法を受ける人は、皮下注射になる。

「複数のアレルゲンを持っている人が圧倒的に多いので、皮下注射が主流になると考えています」

 ただし、安易に飛びつくのは危険だ。高い効果が期待できる分、アナフィラキシーが起こりやすい。一歩間違えれば、アナフィラキシーショックで死に至ることもある。

「アレルギーの治療は“攻めの治療法”です。どれくらいの抗原の量を使うかは患者さんによって違い、医師の経験が問われます。アナフィラキシーショックを恐れて投与する量が不十分だと、効果も低くなる。だからこそ、ギリギリのラインまで投与でき、もしもの時は救命もできる専門医のもとで治療を受けなくてはなりません」

 免疫療法全般に言えることだが、治療期間は数年にわたり、その間は定期的に医療機関に通わなくてはならない。しかも、やってみなければ効くかどうかがわからない。画期的な治療法が登場したとはいえ、免疫療法は気合と根性が必要なことも頭に入れておこう。

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