今押さえておきたいがん治療

去勢抵抗性前立腺がん治療が前進 新薬カバジタキセルの実力

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 前立腺がんは、2020年に男性のがんで罹患者数第1位、患者数は約10万人になると予想されている。昨年、3種類の新薬が登場し、治療は大きく前進した。

 前立腺で進行がんや再発・転移がんの場合、男性ホルモンの分泌を抑えるホルモン療法が第1選択肢になる。しかし、男性ホルモンの分泌が抑えられているのに、病勢が進行する場合がある。これを「去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)」という。

 3種類の新薬は、いずれもCRPCの治療に用いられるものだ。これまでは抗がん剤「ドセタキセル」が用いられ、それが駄目なら緩和医療が検討されていた。しかし、新薬登場で状況が変わった。

 新薬のうち、2種類はより強化されたホルモン療法を目指した薬剤。残り1種類が「カバジタキセル」で、従来薬と同様に抗がん剤だ。

「カバジタキセルは国際試験を経て販売された薬で、海外では多くのデータがあり、有効性が高いと認められています。しかし、日本で発売直後、死亡例も含む重篤な副作用の報告がありました。海外と日本では治療の進め方が違うことから、海外の標準の使い方と日本の標準は異なります。日本ではどのように使うと安全で効果が高いのか、注目が集まりました」(近畿大学医学部泌尿器科・植村天受教授)

 従来薬と比べ、死のリスクもある副作用「好中球減少症」の発症頻度が高い。そこで、医師が初回投与時に好中球減少症の出現パターンを確認し、症状が出たら速やかに抗菌薬を投与する。場合によっては予防に役立つ薬剤の投与を行う。さらに、患者には施行時の注意事項をよく説明する。

「好中球が減少している間には、食事はよく加熱する。寿司や生野菜などは控えたほうがいいでしょう。手洗いを徹底し、皮膚や口腔内を清潔に保つ必要がありますが、思いきり洗うと皮膚に傷がついて菌が入る。現場の医師にはこれらの指導をなかなかできないので、看護師や薬剤師の役目が重要になります」

 世界では、従来薬ドセタキセルを決まった期間だけ使い、カバジタキセルに移行する。しかし日本では、従来薬の投与に期限はない。だから、どこで従来薬をやめ、カバジタキセルを投与するか、そのタイミングが重要なポイントになる。

「カバジタキセルは、全身状態がよく、臓器機能が保たれた患者さんに投与することで、生存改善が期待できる。また、ホルモン療法を強化する2種類の新薬は、従来薬ドセタキセルの前に使う方法もいわれていますが、最初から従来薬をやり効かなくなったらカバジタキセルがベターの患者さんもいるのです」

 見極めるには、腫瘍マーカーや症状、画像検査の結果、副作用などをしっかりモニタリングする必要がある。

「モニタリングをきっちりできる医療機関を探さなくてはならない」

 それが、薬の効果を最大限に発揮することにつながるのだ。