耳鼻科の病気

入院治療が必要な突発性難聴

 突発性難聴に確立された薬はありません。一般的に、耳鼻咽喉科の専門医はステロイドにビタミンB12や血液循環剤を付け加えて投与します。通常は内服で、入院なら点滴を行います。

 内服と点滴の効果にどのような差があるのか、確立されたデータはありません。患者さんの中には「じゃあ、お薬もらって、入院しないで自宅で寝ていればいいんですね」と言う方もいらっしゃいます。しかし、私は経験上、中等度以上の突発性難聴は入院治療をおすすめしています。

 ステロイドは、胃潰瘍のある方の場合、症状を悪化させるケースがあります。糖尿病の方は血糖値のコントロールがうまくできなくなることもあります。このような方はできれば入院していただき、消化器や糖尿病の専門医と協力して治療に当たります。

 施設によって、薬と一緒に、高気圧酸素療法や混合ガス治療、星状神経節ブロックを行う場合があります。最近ではステロイド等の薬剤を耳の中に注射する方法も報告されています。治療法については納得がいくまで主治医と相談して下さい。

 なお、突発性難聴は「約3分の1は完治し、3分の1は回復するが難聴を残し、3分の1は治らずに終わる」(公益財団法人「難病医学研究財団」難病情報センターから)とされ、治療が早ければ早いほど回復の具合がよいといわれています。

 治療がうまくいかない要因は、①発症後2週間以上経過して治療を始めた、②発症時の平均聴力が90デシベル以上の高度難聴、③回転性めまいを伴う、④高齢者――などが挙げられます。

 突発性難聴は繰り返しません。聴力が固定化したあと、難聴が悪化したり、めまいがひどくなったりした場合は、突発性難聴ではなく他の疾患を考えます。聴神経腫瘍、外リンパ瘻やメニエール病です。これらは精密検査と画像検査により診断していきます。

 鳥類と違って、哺乳類の耳の細胞には増殖因子はありません。一度死んでしまった細胞は生き返りません。耳が聞こえなくなったら、すぐに耳鼻咽喉科を受診して下さい。

大場俊彦

大場俊彦

慶應義塾大学大学院博士課程外科系終了。医学博士甲種日本耳鼻咽喉科学会認定専門医。日本レーザー医学会認定専門医。日本気管食道科学会認定専門医。米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会フェロー。国際レーザー専門医。厚生労働省補聴器適合判定医・音声言語機能等判定医。日本耳鼻咽喉科学会騒音性難聴判定医・補聴器相談医。