独白 愉快な“病人”たち

タレント・女優 長谷直美さん(58) 大腸がん

長谷直美さん
長谷直美さん(C)日刊ゲンダイ

 海外生活を終え、芸能界に復帰したばかりの2年前、人間ドック体験リポートのお仕事をいただきました。セレブ向けの人間ドックで、休憩する椅子は革張り。実際に検査を受けながら、ゴージャスな病院を紹介する内容でした。

 今まで病気はなく、フランスにいた頃に更年期障害になったぐらい。

 でも、フランスでは更年期障害っていう概念はなくて、それもあなたの個性っていう診断。処方されたのはマグネシウムぐらいのものでした。

 収録は、検査と結果の2回。初回は検査を体験し、PETの検査結果のサンプルを見せていただきながら、レクチャーを受けました。先生が「がん細胞のところには糖が集まってこういうふうに光るんですよ」なんて教えていただいて。そして2週間後に結果を聞くシーンの収録予定でした。

 ところが、2回目の収録前にマネジャーから電話があり、直接会って話をしたいと言う。会うと、もじもじしながら、検査結果を聞くかどうかと聞くんです。

「そりゃ聞くでしょ、検査受けてきたんだから」と答えると、「もしね、何か出てきたらどうする?」って言うんです。今なら収録ごとお蔵入りにしていただくこともできる、という配慮でした。なんかあるんだな、と思ったけど、別に大丈夫です、と言い切りました。

 結果を聞く収録に行くと、スタッフもなんだかよそよそしい。PETの結果を見たら、大腸にゴルフボールぐらいの丸いものが光っている。
「まだハッキリとは分かりませんが、大腸がんの可能性があります」

 カメラが回っているところでがんの告知。それが、私にとってはよかった。スタッフが私の状況を一緒に受け止めてくれたと思うと、ショックが少なくて済みました。あれをひとりで受け止めるのはつらかったんじゃないかな。

 人間ドックの先生が紹介してくれたのが、順天堂大学病院と国立がんセンター。「それって、がんだよね!」って、ツッコミたくなりましたよ。

 幸運にも、がんの根が張ってなくて、転移もないタイプだったので、腹腔鏡による切除手術で済ますことができ、傷も少なく、痛みもなく終わりました。

 おかげで、手術が終わってすぐお腹がすいちゃって。1日3万円もする入院費だってもったいないから、5日で退院させてもらいました。食べちゃいけない食べ物の注意はありましたが、抗がん剤治療も受けずに済み、どこも問題なし。報道を見たみなさんに心配されましたが、私の場合は病状がほんと軽かった。私的には、盲腸よりも軽いくらい。

 実は渡仏したばかりの妊娠6カ月の頃、痔で病院に行ったら、麻酔もせずに患部を切り取られたことがあるのです。あのときの方が痛かった。フランスって、簡単な外科手術でも専門の麻酔医を頼まないといけないんです。私がかかったドクターはそれを省略して麻酔ナシでいきなり始めた。もう、患部をえぐりとられたときの激痛ったら……、あれほどの痛みはなかったですね。

 手術を終えてから、フランスにいる娘に事後報告すると、「ママはお酒禁止!」って叱られました。でもね、お酒はそう簡単にはやめられないな。

▽はせ・なおみ 1956年、東京都生まれ。17歳でデビュー。76年に「俺たちの朝」で勝野洋の相手役で注目を浴びる。その後、「太陽にほえろ!」では女性警官役、マミー刑事として出演。95年に渡仏、出産。2011年に渡英、英国演劇学校に入学し、英国の俳優国家認定試験に合格。12年に帰国。15日に初のディナーショーを開催(チケットは完売)。