「イライラ感を抑えられない。ちょっとしたことで夫や子供を怒鳴り散らしてしまい、その都度、自己嫌悪に陥ります」
そう言ってうつむくK美さん(38)。ご本人は「更年期障害ではないか」と心配されて漢方薬局にいらっしゃったのですが、詳しくお話を伺うと、「肝」の機能低下が原因のように考えられました。
これまでにも何度か出てきている「肝」。西洋医学の「肝臓」とは違う概念であることは、みなさん、なんとなくご存じかもしれません。改めて説明をすると、東洋医学の「肝」は、肝臓の機能に加え、目や筋肉にも働きを持ち、血液の貯蔵・供給の働きも担っています。
さらには、全身に気を巡らす“気持ちの部分”にも関係しています。
K美さんは、どうしてか分からないが、漠然とした不安感があり、夜も熟睡できないとのこと。これらも、イライラと同様に、肝の機能低下から生じる症状です。肝の働きを調整する「抑肝散」をまず服用してもらうことにしました。
漢方薬は、その人にピタリと合うものであれば、効果は比較的早く出てくることがほとんどです。K美さんの場合がまさにそうで、いつも感じていたイライラ感が、スーッと空中に消えたようになくなったそうです。不安感があったことも、いつの間にか忘れており、夜はぐっすり眠れ、時に朝、寝坊してしまうほどだとのことでした。
(久保田佳代/「漢方の氣生」代表、薬剤師、心理カウンセラー)
漢方達人をめざせ!