徹底解説 乳がんのなぜ?

医師が認識していない患者の悩み

「乳房再建キャラバン」のHP
「乳房再建キャラバン」のHP

 NPO法人「エンパワリング ブレストキャンサー」は、乳がんを患った人に、乳房再建手術についての正しい知識、そして希望と自信を持ってもらうことを目指して活動している。

 各地をめぐり、形成外科医やその地在住の患者たちとともに、乳房再建について意見交換などを行う「乳房再建全国キャラバン」をはじめ、さまざまな活動を通して、当事者だからこその悩みが浮き上がってくるという。

 理事長を務める真水美佳さんが、右胸に5ミリと7ミリ、左胸に2.5センチの乳がんが見つかったのは、北斗晶と同じ48歳の時だ。右胸は全摘、左胸は温存だが「一部引きつれる」と医師に言われ、「何もしないで天寿を全うしよう」とまで思い詰めたという。

 セカンドオピニオン、サードオピニオンを経て知識、経験、理解がある形成外科医、乳腺外科医と巡り合い、右胸は全摘で自家組織による乳房再建手術を、左胸は温存手術を受けられた。結果的に納得も満足もいく治療になった。しかし感じたのは、「患者が得られる乳房再建手術に関する情報が、あまりにも乏しすぎる」ということだった。

「全国キャラバン」などで質疑応答を行うと、医師から「非常に勉強になった」と言われることが多い。医師が認識していないほど、患者の悩みは多い。さらに、傷のケアなど、「ベストの用法」が確立していないことも少なくないという。

 例えば、「どのブラジャーを選べばいいのかわからない」という問題――。

 医療者側からは、「自家組織による乳房再建では、就寝中にワイヤ入りで乳房を寄せた方がいい」「シリコーン(人工物)の乳房再建はワイヤ入りはNG」「いや、使ったほうがいい」など錯綜した情報が寄せられる。

「術式や個人によって悩みは千差万別ですが、私は一般的なブラジャーでは一部が神経に当たって頭痛がひどくなるので使えません。ワイヤも抜かないと痛くて使えません」

 しかも、患者用のブラジャーは実用一点張りでファッション性がない。肌色のブラジャーを目にするたびに「乳がんで乳房を取ったんだ」と再認識させられる。

 また、シリコーンを使った乳房再建を受けた後はうつぶせになりづらく、マッサージなどを受けるのにもちゅうちょする。そういった「日常的なちょっとした注意点」を説明されていない人もいる。

 ほかにも、「乳房再建手術に向けてエキスパンダーを入れたが痛みがひどいのはなぜか」「傷口を目立たなくさせるためにいい方法はないか」など、乳がん経験者だからこそ分かること、診療室では医師に聞けないことなど、さまざまな質問が寄せられる。

 日本人の性質上、質疑応答などでは上がってきにくいが、夫婦間の性生活の問題もある。

「直接話を聞くと、胸を見せるのが嫌で、そういうことがなくなったとおっしゃる方もいます」

 それでは、乳房再建手術のいいドクターを選ぶにはどうすればいいのか?

「再建手術をどれくらい行っているかを聞き、手術をした写真を見せてもらう。腕のいい形成外科医は、必ずといっていいほど見せてくれます」

 認定医制度はあるが、実技の講習はない。認定医かどうかでは、乳房再建手術を安心して任せられるかどうかの判断基準にはならない。