その症状は…病気のサイン

【息切れがする】喫煙歴があればまずはCOPDを疑う

喫煙歴あればまずはCOPDを疑う
喫煙歴あればまずはCOPDを疑う(C)日刊ゲンダイ

「50歳を境に坂道や階段で息が切れるようになりました。たばこはとっくにやめましたし、レントゲンで異常が見つかったことはありません。やはり年齢ですかね……」

 根木憲康さん(仮名・51歳)は、建設解体業で働くサラリーマン。20歳から1日1箱程度喫煙していたが5年前に禁煙。息切れは年齢と運動不足のせいだと考えている。だが、これは命に関わる病気のサインかもしれない。

 日本医科大学付属病院・呼吸器内科の吾妻安良太教授は言う。

「中高年で息切れ症状があり、喫煙歴があるというと、まず疑うのは『COPD』(慢性閉塞性肺疾患)です。肺への空気の出入り口が狭くなる病気の総称で、1日1箱以上の喫煙を20年以上続けている人に多い病気です。なかでも『肺気腫』の頻度が高い」

 肺は、肺胞(細かい空気の部屋)が密集したスポンジ構造をしており、その肺胞の薄い壁を通して血中の酸素と二酸化炭素を交換している。肺気腫は、肺胞の壁が壊れてつながってしまったことで大きな肺胞が増え、正常な肺胞が減って、吸った空気をうまく吐き出せなくなる病気だ。喫煙経験のある40歳以上の8人に1人はCOPDの可能性があるといわれている。

「解体業のように粉塵やカビ、古い建物に使われていたアスベストなどを吸い込む可能性がある仕事に携わっているとなると、一層可能性が高くなります。しかし、たんや咳、息切れ以外に初期症状がほとんどなく、早期に発見することはとても難しいんです」

 定期健診の胸部レントゲンなどに表れるころには中程度に進行していることが多い。重度になると酸素ボンベを手放せない生活。死亡原因第10位の病気でもある。

「軽度で発見するにはスパイロメーターという測定器で肺活量を測る方法があります。全力で強く吐き出す全空気量のうち、はじめの1秒で吐き出した空気量が70%未満だと軽度の肺気腫と診断できます。心あたりがある人は、この肺活量検査やCT撮影などの定期健診が有効です」

 では、5年前に禁煙した根木さんはどうか。

「今は吸っていない、あるいは喫煙歴がまったくない場合は『間質性肺疾患』の可能性も考慮しなければなりません。肺胞の壁(間質)が炎症を起こす病気で、COPDとの合併も考えられます。間質性肺疾患のなかには、やがて肺が線維化してしまう『肺線維症』もあります」

 肺気腫とは逆に肺が縮んで空気が十分入らない病気で、急性増悪すると命の危険が伴う。

「いずれにしても一度壊れた肺胞は再生しないので、治療は進行を食い止めることしかできません。原因物質により治療法は異なりますが、煙や粉塵などを吸い込まない環境がもっとも大事になります」

 発作的な息切れでゼーゼー、ヒューヒューと音がする場合は「喘息」を疑う。気管支が炎症を起こして細くなる病気で、明け方に起こりやすく、中高年で初めて発症するケースもある。同じように明け方に息切れを感じるのは「心臓弁膜症」の可能性もある。手足がむくむのが特徴だ。

 また女性に多いのは「貧血」。ヘモグロビンが減り、酸素運搬量が60~70%になると息切れが起こる。脈が速かったら貧血の疑いありだ。

「息切れは呼吸器系、循環器系の疾患も考えられますが、心因性や体重が増えただけでも起こります。まずは、かかりつけ医での受診をお勧めします」